【ケーススタディ】メディア駆動型ベンチャーに未来を感じた

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エッセイ

釣った魚を共有する写真SNSアプリを開発するウミーベが資金調達に成功しました(リンク)。同社の特徴は、釣りに特化したニュースサイト「釣報」を並行して運用している点です。競争が激化するアプリ市場、Webサービス市場では、自社メディアを構築してユーザーの囲い込みを行う「メディア駆動型」の起業が効果的なのかもしれません。

 

コンテンツマーケティングによる「プル型」マーケティングが主流に

モバイルアプリの80%が数日で使われなくなるという調査がある程、ユーザーの囲い込みは難しい時代になりました。Webサービスでも同様で、ユーザーを増加・維持させるには、オンライン広告やテレビ広告を使わなければならず、宣伝広告費が上昇し、利益率を大幅に押し下げてしまいます。広告のようにユーザーから企業へ情報を流す「プッシュ型」のマーケティング手法は、投資対効果が下がる傾向にあります。

 

「プッシュ型」に対して、ユーザーが企業を見つけるように仕向ける「プル型」のマーケティング手法が注目を集めるようになりました。具体的には、ユーザーが抱える問題やその解決策を記事として用意しておき、検索エンジンやソーシャルメディアからの訪問を目指す「コンテンツマーケティング」がWebマーケティングの主流となっています。2016年では、実に7割の企業がコンテンツマーケティングを実施しているという調査が発表されました。

 

新しいWebサービスやモバイルアプリを開発する際には、このコンテンツマーケティングの力を活用するのが、低いコストで着実にユーザーの心をつかめる手段と考えられます。そこで、本記事では、この手法を「メディア駆動型起業」と名付け、提案します。

 

ウミーベに見る「メディア駆動型」起業

ウミーベは「メディア駆動型起業」の好例と言えるでしょう。同社は釣果共有カメラアプリ「ツリバカメラ(https://tsuriba.camera/)」を開発しており、釣果アルバムの作成、釣り場の検索、釣り人同士のコミュニケーションを主な機能としています。このアプリの集客を考える上では、アプリストアに掲載するだけでは十分ではなく、釣り人からの認知を獲得しなければなりません。資金が足りないベンチャー企業で広告による販売促進は現実的ではないため、コンテンツマーケティングによる集客が有効となります。

 

同社は、ニュースサイト「釣報 [ツリホウ](http://tsuriho.com/)」を運用し、新製品情報や釣りノウハウなどを毎日配信しています。開設1年あまりで月間150万ページビューに到達し、業界のリーダー的メディアに成長しました。大きな成長を遂げたニュースサイトは他社から広告掲載を受け付けて収益源とする見込みがあります。また、ニュースサイトとアプリの利用者層は基本的には一致するため、相互送客により、持続的な成長が狙えるのもメリットです。

 

お金をかけずに成長させる「グロースハック」の一例

少ない予算でユーザーを飛躍的に伸ばす手法は「グロースハック」と呼ばれますが、コンテンツマーケティングによってアプリのユーザーを成長させるウミーベの手法はグロースハックの一つと言えるでしょう。グロースハックの仕組みを説明する方法として、AARRRモデルが提唱されています。それぞれ、以下の頭文字をとったものです。

  • Acquisition(獲得)
  • Activation(利用開始)
  • Retention(継続利用)
  • Referral(紹介)
  • Revenue(収益化)

 

ニュースサイトとアプリの併用によって、AARRRモデルを上手に運営できるようになります。優れたコンテンツがあれば、検索エンジンなどからユーザーの「獲得」がスムーズになります。ニュースサイトと連動してアプリが紹介されれば、それは「利用開始」のきっかけとなるでしょう。アプリの「継続利用」はベンチャー企業の成長や利益の確保に非常に重要ですが、ニュースサイトは毎日更新されるため、ユーザーの接触頻度が高くなります。ニュースサイトはもちろん、ウミーベの場合、SNS型のアプリなので、友人の「紹介」もスムーズです。利用頻度の高いユーザーが多く集まれば、広告や会員限定機能などで「収益化」を図るのも容易になるでしょう。

 

「リーンスタートアップ」によって起業の成功確率を上昇させる

起業を成功させる手法として「リーンスタートアップ」が提案されています。リーンスタートアップは小さな失敗を重ねて大きく育てる方針の下、製品を高い頻度でリリースし、顧客からのフィードバックによって改善していく方法です。市場と製品のすり合わせが”こまめ”にできるため、未知なる新製品でも、確度が高くユーザーからの支持を集められます。ウミーベの手法はリーンスタートアップの一種と考えることが可能です。

 

まず、釣りの情報はインターネット上にそれほど移行されておらず、人々の口コミや紙の雑誌が主要なものだと言われています。その市場の中で、モバイルアプリによって釣りの成果を公開するSNSは、ユーザーに受け入れられるかどうかが定かではありません。そこで、まず、ニュースサイトを開発し、「インターネット×釣り人」のニーズを探る必要があります。ニュースサイトの人気が集まれば、それをインターネット上でシェアしたいとう欲求が確認できますし、引いては、モバイルアプリによってリアルタイムに釣りの成果を確認したいというニーズを検証できることにもなります。

 

まとめ

Webサービスやモバイルアプリを新たに開発する場合に、コンテンツマーケティングを並行して運用する手法を「メディア駆動型」起業として提案しました。開発スキルとメディア運営スキルは異なる点があるため、創業チームの構成によっては必ずしも望ましい方法ではないかもしれません。それでも、多くの場合は、起業家の専門性をアピールしながら、ユーザーを獲得できるため、並行運用が効果的な手法として広まっていくのではないでしょうか。

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