世界中で大流行するポケモン Goですが、任天堂自身がポケモンGoが業績に与える影響は限定的であると表明したため、株価は大きく下がってしまいました。これほどの強力なゲームを任天堂はなぜ自社で開発せず、米国Niantic社に開発・販売を任せてしまったのでしょうか。
NianticはGoogleから独立し、ゲーム開発を行うベンチャー企業です。以前はポケモンGoと同じ仕組みを持つ、Ingressという位置情報ゲームを開発し、ポケモンGoほどではありませんが、世界中からファンを集めました。
Niantic社にはGoogleと任天堂、さらに、ポケモン関連のライセンス管理を行う株式会社ポケモンから出資がなされました。任天堂はNianticへの直接投資と、32%の株式を所有する株式会社ポケモンから収益を得る構造になっています。そのため、毎日1億円とも呼ばれるポケモンGoの収益のほとんどは任天堂本体の収益にならないので、影響は「限定的」という発表がなされたのです。
そもそも、ポケモン Goのアイデアは2014年のエイプリルフールにGoogleが実施したGoogle マップ・ポケモンチャレンジに見られます。そのため、Googleと任天堂の協業が徐々に現実味を増していったのでしょう。しかし、「イノベーションのジレンマ」を考えてみると、任天堂は結果的に理にかなった手段を取ったと言えます。
既存の顧客が求める商品に真摯に向き合うほどに、新技術の対応に遅れ、結果として競争力を失うのが「イノベーションのジレンマ」です。イノベーションのジレンマへの回避策として、新しいサービス開発を小さな別の組織に任せて、適切な顧客に提供する方法が提案されています。大きく育った市場を相手にしている企業では、新興市場に合ったサービスが提供しづらいからです。
高価なハードとソフトで家族団らんの空間を提供してきた任天堂は、一部の積極的に課金するユーザーを対象としたスマートフォン中心のゲーム事業に押され、「イノベーションのジレンマ」に陥っていました。そこで、任天堂はNianticに出資する形式でモバイル端末に合った技術と自社のコンテンツを使ったゲームを開発し、新たな市場創出に成功したのです。実際、ポケモン社の担当者は「過去のポケモンに倣う必要はない」と述べており、大企業の論理に縛られない自由の発想が成功の背景にあったのでしょう。
参考資料