海外では転職が一般的です。一度就職が成功したとしても、自分のキャリア設計は自分で考えなければなりません。海外で働けるということは、異なる言語と文化を乗り越えて成果を上げられるということです。そのような人材が進むべきキャリアは、どのようなものでしょうか。
シリーズ前回の記事は「海外企業の面接官が面接の際に考えている3つのこと – 海外就職シリーズ (17)」
日本と海外では人材に対する考え方が異なる
企業のある役職に空きが出たとします。日本の場合、中途採用によってその役職を埋めることは限定的で、多くの場合、社内の人材を優先的に昇格させたり、異動させたりするでしょう。海外では、社内の人材と社外の人材の優先度にそれほど違いがありません。その役職に必要なスキル・経験があれば、積極的に社外からも採用されます。
社員の側の視点でも、同様のことがいえます。現在の役割で十分経験を積み、より大きな権限で仕事をしたいと考えたとします。自分の会社で昇進する役割があれば、社内での昇格を狙うことができます。しかし、社内にチャンスがなければ、他の会社に移り、望ましい役職と望ましい給与を得ることを目指すべきです。日本は終身雇用の風潮が長く続いてきたので、転職に馴染みがない人も多いかもしれませんが、海外で日本に比べて転職が多い理由の一つは、人材に対する見方が異なるためです。
一つの海外企業を経験すれば、二社目・三社目のステップアップが期待できる
海外で就職した場合、はじめの就職に成功しても、そこで一生働く可能性はそれほど高くありあません。逆に、はじめの就職で希望の役職につけなくても、そこで諦める必要はなく、現在の職場で経験を積み、次の転職の機会を窺うことができます。特に、現地で働いたことがない状態で就職活動をするよりも、現地で少しでも経験があるほうが圧倒的に就職活動は容易になります。
私の場合、ヨーロッパでの職務経験がない状態では、書類選考で落とされることも多くありました。しかし、ドイツで一年間働いている間に、ヘッドハンターから連絡を受け、高額な給与を提示されることもありました。このように機会が拡がる理由は、周囲から信用を得られることにあります。
雇う側からすれば、自分が訪れたこともない遠い異国に住んでいる人を雇うよりも、現地で経験のある人間を雇いたいと思うのが自然です。現地での就労経験があれば、言語や文化についての理解が進み、すぐに会社に馴染むことが期待できます。信用を得るという観点からは、世界中を飛び回るよりも、ひとつの地域に狙いを定めて、経験を積み上げると過去の経歴を次のキャリアに活かすことができます。
仕事とライフスタイルの両方を視野に入れたキャリア開発
海外で生活していると、「いつまで海外にいるの?」とよく聞かれます。実際、仕事上の都合だけでなく、自分のプライベートの計画についてもよく考えなければなりません。家族の人生設計もありますし、子育てをどのように進めるのか、という観点もあります。結婚相手を探す場合は、外国人と結婚して永住するのか、日本人と結婚して帰国するのか、といった選択もあります。実家にいる両親との関係はどうするのか、という視点もあります。
フリーランスなどの仕事の形態をとっていれば、仕事の合間に帰国するなど、柔軟に対応することも可能ですが、会社に就職している場合は、自由度はあまり高くありません。海外は一般的に長期休暇がとりやすいですが、日本に帰国するとなれば、時間も費用もそれなりにかかります。海外で就職するという夢に向かっていくときには、勢いで行くこともありますが、いったん軌道にのってからは、冷静に現実的に自分の将来について、考え続ける必要があります。
シリーズ次回の記事は「グローバルに活躍する人材が持つ6つの特長 – 海外就職シリーズ(19)」