スペイン・バルセロナにとって2017年は歴史に残る1年となりました。夏に発生したテロ事件に加え、秋から冬にかけて起きた独立運動は、世界から注目を集めています。現場で撮影した写真と共に、激動の1年を振り返ります。
100人以上の被害者を巻き込んだテロ事件。テロに屈しないという意思は続いている
2017年8月17日の午後、1台の自動車がバルセロナ市内最大の繁華街ランブラス通りを駆け抜け、多くの人を巻き込みました。13人の方々が亡くなり、130人以上がケガをしたと報じられています。さらに、バルセロナ郊外のカンブリルスでも襲撃が行われました。
私は事件当時、会社で働いており、事件発生後、パトカーやヘリコプターがランブラス通りへ集まっていく様子を目の当たりにしました。事件現場から徒歩で数分程度の距離にいたものの、具体的な被害はありませんでした。
事件の後、ランブラス通りを訪れてみると、多くの献花がなされていました。テロには屈しないというメッセージと共に、被害に遭った方々への追悼の言葉が添えられています。実際、数か月たった後、テロにおびえる市民の姿はありません。警戒するべきところは対策をとっているものの、市民生活は元通りです。
テロ直後にまとめた感想は「バルセロナ、テロの現場に設けられた献花台を前にして思うこと」にあります。
世界中に伝えられた独立運動。長く積み重なった思いが市民を動かす
バルセロナではスペインからの独立を望む市民の活動が盛んになりました。プッチデモン氏に率いられ、住民投票を強行されています。カタルーニャ州政府によると43%の投票率で、約90%が独立に賛成したとされます。中央政府は、その住民投票の手続き自体が違憲であるとして、武力衝突が発生してしまいました。州政府幹部は結局、逮捕され、州議会の再選挙に至っています。
独立運動の期間中、毎週末のように市民によるデモが行われていました。以前はデモが行われる場合でも、家族連れで歩いていたり、ビールを飲みながら時間を過ごしたりする人も多かったのに比べ、今年のデモはより真剣な取り組みに見えました。独立賛成派は若い人の姿が目立ち、独立反対派には様々な世代が含まれていた印象です。
独立賛成派は、フランコ独裁政権時に虐げられた思いや、現在の税制度、汚職の続く中央政府への不信などをもとに、活動を強めています。一方で、独立反対派は、独立を進めても上記の問題は解決されず、かえって混乱を招くと考えているようです。
しかし、中央政府・カタルーニャ州政府の態度は双方とも望ましいものではなく、どちらも信用を失ってきた印象があります。中央政府はメディアを制圧して情報統制を図るという前時代的な方法を使ったり、投票を武力で阻止しようとしたりしてきました。そして、カタルーニャ州政府は、EU各国からの支持が得られず、また、州内に拠点を持つ大企業が州外に移転してしまう事態に陥り、行き当たりばったりな印象を与えています。
現在も問題は解決したわけではなく、今後も独立運動は続いていくでしょう。長年議論されてきた住民投票が遂に実施されたという意味で、スペインの歴史の教科書に載るような出来事となったのが2017年です。