起業やベンチャー企業は、ある意味、特殊な環境であり、経験のない人には華やかだけどリスクのあるものに見えるかもしれません。ほとんどの起業が失敗に終わると言われる中、成功に少しでも近づくための方法論が、実は、多数発表されています。本記事では、起業に関する本質をついた良書を紹介します。
リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
起業する、あるいは、ベンチャー企業で働くにあたり、リーン・スタートアップの理解は必須です。リーン・スタートアップでは「無駄なく効率的に」新規事業を立ち上げるために、最低限の開発を反復的に行い、細かく顧客からのフィードバックを獲得し、検証・改善を高速で進めていきます。実際、ベンチャー企業ではあらゆる物事を検証していく必要があるため、製品開発からマーケティング・キャンペーンまで「リーン」アプローチが採用される傾向にあります。大企業の確立されたプロセスに馴染んでいる人は、「なぜこんなに方針がコロコロ変わってしまうのか」と驚いてしまうかもしれません。主にシリコンバレーで、無数のベンチャー企業が失敗を重ねて確立されたリーン・スタートアップを理解することは、新規事業開発に参加する上で重要と言えます。
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
シリコンバレーで著名な起業家・投資家であるピーター・ティールが、何もないところ(ゼロ)から何らかの事業(ワン)を立ち上げるための考え方について解説した一冊で、世界中で高い評価を受けています。皆がいいアイデアだと賛同するものと、誰もが反対するアイデアのどちらが起業に適していると思いますか?著者は、誰もが反対するものの、自分だけが賛同できるところにチャンスがあると指摘します。徹底した逆張りで、独占状態を計画的に築くのがピーター・ティールの手法です。ベンチャー界隈では当然となった、前述のリーン・スタートアップさえも、ピーター・ティールは鵜呑みにしてはならないと警鐘を鳴らします。世界を変えるような一大事業に挑戦したいと考える人には必読でしょう。
HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
ドラマで描かれるベンチャー企業は華やかなオフィスで野心的な若者が活発に働き、パーティばかりしてるようなイメージかもしれません。しかし、1000に3つも成功しないと言われる現状では、そのほとんどが倒産に追い込まれ、そうでなくても、経営危機と常に隣り合わせになっています。HARD THINGSでは、今では尊敬される投資家となったベン・ホロウィッツが、起業家時代に遭遇した壮絶な体験を赤裸々に語っています。倒産危機、株価急落、顧客の倒産、大規模な解雇など、読んでるだけでも息苦しくなるようなエピソードが続きます。それでも、自分の信念や能力を信じて、困難な物事を乗り越えたところに、起業の成功があるのだと実感させてくれる一冊でもあります。
アントレプレナーの教科書
本記事で紹介している起業関連書籍の中では珍しく、マニュアルのような体裁をとっているのが「アントレプレナーの教科書」です。顧客発見、顧客実証、顧客開拓、組織構築の4つのステップにより、新規事業のアイデアを検証・拡大させていくのが本書の主張になります。起業家スティーブ・ブランクが米スタンフォード大学などで講義した内容に沿って書かれており、リーン・スタートアップが世界的に広まるのに大きく貢献したとされます。精神論よりも具体的なステップが知りたいという方は、初めに手に取るべき一冊です。
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書
本書で紹介される「ビジネスモデル・キャンバス」は起業に関わる人々の共通言語と言ってよいでしょう。誰に対して何の価値を提供し、どうお金を稼ぐのか。新しいアイデアが事業として動くために必要な要素を可視化するのがビジネスモデル・キャンバスです。本書は45か国で実践されたビジネスモデル・キャンバスの知見をまとめ、新規事業を立ち上げるための発想法を解説しています。起業のアイデアが思いつかない、アイデアはあっても洗練させる方法が分からないという方にお勧めです。
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
フェイスブック、アップル、グーグル、Airbnb、Uber、アリババ。現代を代表する企業に共通するのは「プラットフォーム」を活用している点です。プラットフォームは買い手と売り手、消費者と生産者を有機的に結び付け、皆が得をする関係性を築くのが特徴です。少ない資本で大きな成長を実現できるのがメリットであり、経済や人の行動パターンに大きな影響を与えるようになってきました。自身で新しいビジネスモデルを考案するにあたり、現代で最も重要なビジネスモデルである「プラットフォーム」を理解しておくのは重要なことだと思います。
逆説のスタートアップ思考
マイクロソフトで起業支援を行い、東京大学で講義を行う馬田隆明さんが執筆した「逆説のスタートアップ思考」には、直感に反する起業の現実を分かりやすく解説しています。不合理なアイデアのほうが合理的、良いアイデアは説明するのが難しい、難しい課題のほうが簡単になる、良いプロダクトの機能は少ない、多数のLikeより少数のLoveを、スタートアップのアイデアを考えてはいけない。興味深いメッセージが続きます。本書の後に公開された解説資料「Re: 逆説のスタートアップ思考 <七つの逆説>」も必見です。
米国MBA教授が教える:起業からIPOまでMBAのすべて
オンライン学習プラットフォームUdemyでも、起業に関するコースが公開されています。本コースは、MBAで取り上げられる基礎的な事項がオンラインで受講可能です。資金調達、財務分析、プレゼンテーションなど、ビジネス面での知識が習得できます。
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