ベンチャー企業の成長フェーズ:シード、アーリー、グロース、レイター


ベンチャー企業は、いつまでベンチャー企業なのでしょうか。設立からの年数、売上高といった指標で区切るのも良いかもしれません。しかし、一般的には、ビジネスモデルの検証を続けている間はベンチャー企業であり、検証が完了して利益を継続的に生み続ける仕組みが確立できた段階でベンチャー企業から卒業できるとされています。

ベンチャー企業が成長していく間、複数の局面に分かれるとされ、それぞれ、シード・アーリー・グロース・レイターと呼ばれる場合があります。

シード期

シード、つまり、アイデアが「種」の状態にあるベンチャー企業です。アイデアとしてまとまった段階であり、製品ができていない、あるいは、プロトタイプ(試作品)のみが開発された段階となります。事業計画書を作成したり、見込み顧客にアンケートを取って市場調査を行ったりする作業が中心となるでしょう。

必要となる資金は数百万円程度なので、起業家の自己資金や家族からの支援で賄うケースがほとんどです。場合によっては、エンジェル投資家と呼ばれる人たちからの資金調達も考えられます。インキュベーターやアクセレレーターといった起業家支援プログラムの利用も有効です。

アーリー期

従業員が10人以下の小さなベンチャー企業はアーリー(早い)段階にあります。必要最小限の機能を開発し、顧客からフィードバックを受けて、素早く製品及びビジネスモデルの改善を繰り返していきます。最も購買意欲の高い顧客層を見つけ、今後事業が拡大できる可能性を実証することが求められます。このような実績を基に、起業家は投資家に対して事業説明を行ったり、イベントに出展して認知を高めたりする作業が欠かせません。

収支としては赤字になるものの、ビジネスモデルの検証を進めなければならないため、人件費や研究開発費などの出費は続いてしまします。ベンチャーキャピタルから資金調達を行うのもアーリーステージの特徴です。また、補助金・助成金の支援を上手に使い、運転資金の確保を図る施策も起業家に求められます。

グロース期

初期の製品に顧客がつき、「成長」を実現する段階がグロース期です。初めの顧客からのフィードバックを基にして他の顧客へと横展開し、ユーザー数を飛躍的に延ばしていきます。また、ユーザー数の増加と共に、収益化への施策も始まります。Webサービスであれば、無料で展開していたものに加え、有料のコンテンツを配信するといった取り組みが代表例です。そのため、売り上げが前年比で2倍になるといった急激な成長も珍しくありません。

研究開発や営業・マーケティングに必要な予算、及び、急激な従業員の雇用・オフィスの拡充を含めたコストが飛躍的に増える一方で、売り上げの伸びが追い付いていかないケースが多く見られます。そのため、グロース期は現金(キャッシュ)の管理を厳格に行い、倒産を避ける必要に迫られます。ベンチャーキャピタルからの資金調達を繰り返したり、銀行からの借り入れを行ったりする場合もあります。

シード期やアーリー期は、起業家と初期の従業員による個々の頑張りによって支えられていた企業運営が、グロース期には、より組織的な運営が求められるようになります。業務プロセスの策定や開発手順、営業手法の標準化といった作業が必要です。また、数十人まで増えたチームが同じ方向性を向いて仕事ができるよう、企業文化の醸成や人事制度の確立も進めなければなりません。

起業家は往々にして、既存のルールに疑問を投げかけ、それを打ち破っていくのに秀でている一方、ルールや標準を策定し、施行していくのを苦手にしている場合があります。事業が拡大してきた際には、起業家自身が自分の行動パターンを変えていくか、あるいは、業務プロセス策定の経験がある人材を雇用するのがよいでしょう。

レイター期

売上高が30億円を超え、従業員も50人以上まで膨らんだベンチャー企業はレイター(後期)ステージにあると考えられます。業種によっては、損益分岐点を超え、単月での黒字を達成している場合もあります。検証済みのビジネスモデルをもとに、新たな事業展開を考える時期でもあります。大手企業との協業を通じて、社会的にもよく知られた存在へと変わっていきます。もはやベンチャー企業とは見られず、ひとつの企業として認識されるようになるでしょう。

IPO(新規株式公開)や大企業による買収を通して、さらなる事業拡大を狙う時期にも重なります。また、大手のベンチャーキャピタルや証券会社を通して大規模な資金調達を続けるケースも見受けられます。

株式やストックオプションを保持していた創業メンバーは、IPOなどの実施によって多額の現金が受け取れます。そのため、創業メンバーは会社から退き、より安定した企業運営を得意とする人材にとってかわる場合が多くあります。いわゆるプロの経営者が、経営陣に参画していくケースもあります。

佐藤 隆之

海外MBAを取得したITエンジニアが、経営・情報技術・社会的インパクトについて解説します。バルセロナの医療ITベンチャーの技術管理担当。Webメディアにてコラム連載中。