AI as a service (AI・アズ・ア・サービス) って何?業界特化型の人工知能開発に大きな可能性

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ビジネスモデル解説

人工知能開発は、膨大なデータの中から、これまで得られなかった新たな知見を獲得するチャンスをもたらします。多くの企業で人工知能への対応が課題となっている一方で、その環境を構築するには、コスト・時間・知識が不足しています。そこで、人工知能の開発環境をサービスとして提供するAI as a service(AI・アズ・ア・サービス)に期待が集まっています。

 

人工知能プログラムを開発する環境をサービスとして提供するAIaaS

「AIファースト」という言葉が叫ばれるほど、ビジネスにおいて人工知能は欠かせない存在になりつつあります。データを収集・加工し、人工知能を使って洞察を得ることをビジネスモデルの中核に据え、新たな事業を構築するのが経営の重要課題となりました。

 

しかし、AIを使ったシステムを構築し、ビジネス価値へとつなげる人材は十分ではありません。事業として成り立たせるには、膨大なデータを取得・蓄積し、最適な分析手法を選択・実装するのは困難です。

 

そこで、人工知能プログラムを構築する環境をサービスとして提供するAIaaS(AI・アズ・ア・サービス)というべきビジネスモデルが増えつつあります。SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)と同様に、IT回りの運用をシステム提供者に任せて、ユーザーはビジネスに集中できるようになるのがメリットです。

 

AIaaSは、大手企業がしのぎを削る分野になっています。AmazonはAWS上に、機械学習を実装する環境を築き、予測分析などを行えるようにしています。Googleは音声認識・翻訳・画像識別といった機能を提供するようんいなりました。また、オープンソースでTensorFlowというフレームワークを公開し、技術者が機械学習プログラムを開発できるようにしています。さらに、MicrosoftはAzure上で機械学習アプリケーション、IBMはWatsonの人工知能エンジンを利用可能にしています。

 

人工知能を開発できる環境をサービスとして利用するようになると、インフラに要するコストを最適化できる利点があります。並列計算が得意なGPUを搭載したサーバーは、通常のCPUよりも高価なため、自社でインフラを用意すると初期投資が高くつきます。クラウド環境を活用すると、使った分だけ課金されるため、コストを最適化し、拡張性に富んだ環境を利用できるようになります。

 

AIaaSでは、分類や回帰分析といった機械学習の機能が提供されます。これらの機能を組み合わせて、周囲の環境を認識して判断を下す自動運転のような応用的アプリケーションを実現できるようになります。また、自然言語分析を通して、音声アシスタントやチャットボットを作成できます。

 

サービスは、モノを売るのではなく、そこから得られる価値を提供するビジネスモデルです。AIaaSでは、サーバーやソフトウェアを売るのではなく、膨大なデータから新たな洞察を得るという価値をもたらします。

 

インフラ・ツール・サービスがAIaaSを構成する要素

AIaaS市場は、2018年の15億ドルから年率48.2%の成長により、2023年の108億ドルまで到達すると予測されています。(参考:The Artificial Intelligence (AI) as a service market is expected to grow at a Compound Annual Growth Rate (CAGR) of 48.2%)ユーザー企業は既存のビジネスにAIの機能を組み込み、事業の最適化を進めます。人工知能プログラムの開発は時間がかかるため、AIaaSの利用が増加していく見込みです。

 

AIaaSには、いくつかの要素が含まれます。まず、インフラの観点では、データを格納するデータベースが存在します。膨大な量のデータに対応できる拡張性や、リアルタイムの分析に耐えられる性能が必要です。また、分析処理を実現するため、並列計算やバッチ処理、仮想化技術が求められます。

 

技術者がプログラムを実装できるためのツールも、AIaaSの一部です。TensorFlowのようなフレームワークから、IDE(統合開発環境)まで人工知能プログラムの開発を支援します。

 

そして、サービスとして人工知能プログラムを提供する機能が必要です。人工知能では、膨大なデータを基にアルゴリズムを訓練し、新たなデータが投入されたときに、適切な判断を下す仕組みになっています。この新たなデータを活用するサービスはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として提供されることになります。

 

マーケティングをはじめ、各業界で人工知能開発が求められている

マーケティングや顧客分析の分野では、人工知能の活用が見込まれています。需要予測、離反分析、LTV(ライフタイムバリュー)最適化、不正取り引き検出、グラフ関係分析、空間分析、CRMといった活用方法が考えられます。AIaaSを使えば、企業は顧客の振る舞いや人工知能プログラムの要件定義に注力し、そのインフラはクラウド・ベンダーに任せられるようになります。

 

大手クラウド・ベンダーに加え、分析技術に特化したベンチャー企業がAIaaSを提供するようになっています。DataikuBigMLForecastThisといったサービスが開発されました。

 

これからのAIaaS市場を考えると、業界特化型の人工知能開発が進んでいくと考えられます。データの分析は、そのデータの特性に合わせてアルゴリズムを最適化する必要があるため、業界をよく理解したベンダーが価値を発揮するようになるでしょう。

 

ヘルスケア

フィットビットのようなウェアラブル機器を始め、生体データを継続的に収集できる仕組みが増えつつあります。健康リスクを算出し、医療コストを最適化し、予防・治療を促進する新たなヘルスケア・サービスが待たれています。

 

小売り

過去の売り上げや需要、価格変動、流行を勘案し、販売手法を進化させます。セグメンテーションや顧客獲得、商品推薦、価格設定といった価値を提供できるようになります。また、コストを抑えつつ顧客に合わせた商品を提供する「マスカスタマイゼーション」の実現にも、人工知能が大きな役割を果たします。

 

銀行・保険

取り引き履歴からリスクを算出し、貸し付けや保険の販売に役立てます。これまでよりも細分化したリスク算出により、手数料の低減や、プロセスの最適化を目指します。

 

製薬

遺伝子や医療画像など、製薬業界には膨大なデータが溢れています。人間では処理できないほどの情報を人工知能で解析し、これまで見つからなかった薬の発見や、効能の正確な評価を行えるようにします。治験にかかるコストを削減し、製薬のプロセスを高速化する期待が持たれています。DatavantArterysといった企業が代表例です。

 

自動車・交通・輸送

交通量の調整や空港システムの最適化のように、データ分析によって高度化できる分野があります。特に、GPSや車載センサー等、取得できるデータが増えつつあり、人工知能の適用範囲が広がってきました。

 

少ない従業員と少ない資本で、高い付加価値を提供する人工知能ビジネス

AI技術の特徴は、プログラムを実装すれば、付加価値の高い分析が提供できる点にあります。つまり、優秀な技術者がいれば、多くの従業員や資本がなくても、これまで世界に存在しなかった新たなサービスが作れるのです。

 

Googleに買収されたDeepMind社は従業員が700人程度ですが、眼科治療の診断プログラムの実装・囲碁チャンピオンを打ち破る快挙・Googleグループに対する人工知能プログラムの提供といった仕事を行っています。日本で先進的な機械学習プログラムの開発を行っているプレファード・ネットワークは、100人程度の従業員で、その評価額は20億ドルに達しました。

 

AI事業は少ない資本と優秀なエンジニアで進めるビジネスです。GoogleやAmazonが提供するインフラを活用し、業界特化型のサービスを開発するのが、今後のトレンドとなるかもしれません。

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