6 年の海外生活を経て、カルチャーショックが異文化体験として昇華されるまで

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海外就職

海外で生活できる人は誰しも大きな苦労を乗り越えて生きてきた

海外生活を始めるのは誰にとっても大変なことと思います。私は海外生活が6年を超えたところですが、生活しているだけでも立派だと感じるこの頃です。好きで選んだ道ではあるし、海外にいるだけで自慢するなという声もあるかもしれませんが、自分が歩んできたこれまでを振り返ると、大人になってから海外生活を選んだ人は誰しも尊敬に値すると思います。

 

私の住んでいる街、バルセロナ、には、語学留学やMBA留学で訪れる日本人も多く、自分が体験したのと同じように、カルチャーショックに苦しんでいる後輩をよく見かけます。文化の違いはもちろん、教育制度にも大きな違いがあるので、学校で思い通りの成果が出せないといった例もありました。

 

そういった後輩を見て思うのは、皆に共通している課題なので焦る必要はない、という点です。日本では簡単にできた日常生活の些細な作業や仕事も、海外では全くできなくなってしまいます。海外生活を新しく始めた人は、いつでも世界中に存在しているので、自分一人ではないと思うべきです。

 

自分が海外留学を準備しているときに、留学経験のある先輩から「足るを知る」という言葉を授かりました。ここまでできたのだから納得しよう、という心構えがあってこそ、海外では前向きに暮らしていけます。数年経った後でも、この言葉は最も心の支えになっています。海外生活や留学・海外就職に関して、理想を描いてしまったり、日本時代にできて当たり前だったことを海外でも続けられると思ったりしては、挫折感ばかりに悩まされてしまいます。大きく環境の異なる場所では、自らの実績をきちんと評価してあげる必要があります。

 

アドラーの異文化適応5段階が説明するカルチャーショックを乗り越えるプロセス

心理学の分野では、異なる文化になじむプロセスについて研究がなされてきました。有名なものは、「アドラーの異文化適応5段階」が提唱されています。

1.接触期

ハネムーン期とも呼ばれる時期です。見るものすべてが刺激的で新しく感じられます。これまでに属していた文化から、異文化を見ているため、表面的な違いにとらわれ、深い部分が見えていないのが特徴です。

2.自己崩壊期

いわゆるカルチャーショックを感じます。新しい文化の中で、考え方や価値観の違いに戸惑い、自信を失います。喪失感や孤立感・疎外感を抱く時期です。

3.再統合期

異文化を拒絶します。新しい文化の全てを否定したり、過度に一般化して偏見を持ったりします。

4.自律期

文化的差異や共通点をありのままに受け入れられるようになる時期です。新しい国の習慣や言葉を覚え、過去の習慣に頼らずとも、状況に応じて判断するようになります。

5.独立期

文化の相違点や共通点を楽しめる余裕が得られます。異文化体験により自分を成長させ、新しい行動様式を獲得していきます。

(参考:海外生活が嫌で異文化を拒絶、ホームシックになったとき

 

海外生活6年で再統合期・自律期にさしかかった私の体験談

自分もそれぞれの段階を経てきたように感じています。接触期は、海外留学前に旅行で訪れたときに体験しました。有名な食事やスポーツ・イベントを体験して興奮したり、現地の人の真似をしてコーヒーを飲んでみたりして、異なる文化を表面的にたどっていました。それよりも、何万キロも離れた場所で、人間が同じように家をたて、社会生活を送っているのが驚きで、感心していたのを覚えています。

 

自己崩壊期は、海外留学を始め、生活を確立する段階で訪れました。例えば、アパートを探すとき、不動産業者はたいてい時間に遅れてくるくせに、こちらが少しでも遅れると先方は待ってくれず、予定がキャンセルされてしまいます。学校に通っていても、生徒が発言を求められる機会が圧倒的に多く、勉強の進め方の違いに絶望を覚えました。

 

後輩たちを見ていると、やはり日本の「空気を読む」「相手の気持ちを考える」といった習慣を引きずってしまい、フラストレーションを抱える人が多く見られました。「言わなくても、見たらわかるだろ!」「謝りもしないで、あの態度は何だ!」と言ってみても通じません。言葉にするのがコミュニケーションなのだと知りました。

現在の自分は再統合期と自律期の間ではないかと感じています。異文化を拒絶しているように思えるのは、しばらく現地の言葉を勉強していない点が挙げられます。家にいるときは、日本食をつくり、日本の動画を見てリラックスしています。拒絶している自覚はありませんが、何のために海外にいるのかと思ってしまうのも事実です。

 

自律期にさしかかっていると思えるのは、生活が安定しストレスが少なくなっているからです。周囲に過度な期待はしなくなっているし、自分を追い込むこともありません。自宅の周辺には馴染みのお店もあります。これまで苦労してきた衣食住や就労ビザの心配も減り、より高度なやりがいだとか自己実現について考える時間もできてきました。

 

これから独立期に向かうには、より異文化を理解していくステップがあるのだろうと予測しています。現地の言葉の勉強も再開したいし、習い事をする等、現地のコミュニティに入りたいという思いもあります。多くの芸術家を生んだ国なので、その背景を理解し、自分の趣味に活かす期待を持っています。

 

再統合期や自律期に至るまで6年近い時間がかかりました。海外留学などで1年程度の海外生活を送る人の場合、自己崩壊期で止まってしまう可能性もあるでしょう。さらに、日本に帰った際に、逆カルチャーショックで苦しむかもしれません。「韓国10年目、アドラーの異文化適応の5つの段階をすべて経験」を見ると、5段階を経るまで10年経っています。カルチャーショックに苦しんでも、世界で共通しているものなので焦らず取り組むしかないのだと思います。

 

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カルチャーショックに苦しむ際には、何らかの助けが必要になる場合があります。駐在で海外赴任した家族がうつ状態になってしまうというニュースもよく見かけました。海外での生活には多くの場合、苦労があります。誰かに話を聞いてもらうだけでも、大きな助けとなります。

 

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