CTOのタイプ別分析。業界や企業規模によって異なる5つのパターンとは

※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています。

CTOの視点

CTOは、様々な業界で、製品やサービスの中に技術を活用する責任を持った担当者として任命されています。経営陣の一人として、企業の競争優位を保つため、戦略的な意思決定を行う役職です。これまで、CTOの役割や必要となるスキルは度々なされています。ロジャー・スミスの研究では CTOに共通する5つのパターンを特定しています。天才型(Genius)、管理者型(Administrator)、監督者型(Director)、経営者型(Executive)、調停者型(Advocate)の五つです。

これらのパターンは、一人のCTOの中に複数見られるケースもあり、また、時間をかけて企業が成長する中で、CTOの行動パターンが変化していく場合もあります。企業規模や業界の特性に応じて、必要となるCTOの特性が異なっていきます。CTOを目指す人、CTOを採用したい人は、これらのパターンを意識すると良いでしょう。

CTOはCIO(最高情報責任者。チーフ・インフォメーション・オフィサー)と混同される場合がありますが、業界や企業規模によって、役職を統合できるケースがあれば、別に任命するべきケースもあります。そのときに応じて、最適な特性を定義するべきです。

 

天才型CTO:共同創業者として新技術を使って商品・サービスの開発を牽引する

現代は、情報技術・バイオ技術・ナノテック・先端医療など、様々な技術が進化するのを目の当たりにしています。これらの進歩は、数名のイノベーターによって実現される場合が、よくあります。自発的で才能に溢れ、まだ明らかになっていない物事を探求したいという意欲を持った人材が合致します。

アップルのスティーブ・ウォズニアック、グーグル のセルゲイ・ブリンがは代表的な天才型CTOの例です。ビジョンを描き、新製品を開発するのに長けていた彼らは、先端的なコンセプトを実用化する役割を担いました。このような特徴を持ったCTOは、生まれたばかりのベンチャー企業や、ベンチャーキャピタルにコンセプトを開示するような段階では、極めて重要です。

一方で、天才型のCTO は、開発者を管理したり、組織をまたがったプロセスを管理したりするのを苦手とする傾向にあります。ベンチャー企業を立ち上げるフェーズには向いていても、企業が成長して、長期的な戦略や組織・プロセスの構築を行う時期には、最適な人材ではない場合もあり得ます。

 

管理者型CTO:組織・プロセス・外注業者の管理を担当し、業容拡大に貢献する

CTOは開発チームのコスト低減に責任を持つ場合があります。外注業者との交渉を行い、予算を守りながら、求める成果を上げなければなりません。また、人員数・労働時間を管理し、コスト超過を防ぎます。

大手企業や政府機関は、製品やサービスを利用に関して、外部の業者に依存しています。また、ベンチャー企業でも、多額の資金を調達した後は、自社内で開発するか、他者の技術を買い取るかといったオプションが存在します。その場合に、技術に長けた人間がいなければ、外部業者の選別ができません。マーケティング上の売り文句と技術的な事実を分けて考えなければ、正しい評価ができないのです。

米国空軍の調査研究所の CTO であったジェフリー・パウンドは管理者型 CTO の一例です。マイクロソフトと交渉し、必要な製品の要件やライセンス数を特定し、適正なコストに抑えました。また、外部業者と連携して、パフォーマンスを維持しながらセキュリティ対策を講じるのに成功しています。

 

監督者型CTO:研究開発部門の長として、新技術を活用した商品化の戦略を立案する

企業が十分に成長した後は、研究開発部門の上級職にいた研究者・開発者がCTOへと昇進する可能性があります。優れた人材を操り、未来へのビジョンを示せる人材が該当します。このような人材が、自分で手を動かして研究するのを諦めて、他のメンバーが功績を挙げられるような環境づくりに貢献したいと考えるのであれば、研究開発部門のディレクターからCTOへと登用されていくのです。

成長した企業における研究所は、企業の財務的なパフォーマンスや競争的な位置 に直接的な貢献を求められます。研究開発の商用化を推進するためには、研究開発部門の代表者を経営層レベルまで引き上げ、CTOの役職を与える手法が用いられます。また、CTO は企業の戦略と研究開発活動のギャップを埋めるために追加される場合もあります。

インテル初の CTO であったパット・ゲルシンガーは、このカテゴリーの優れた一例です。彼はインテルの研究所・アーキテクチャーグループを担当しました。インテル製品の技術的な特徴を極めてよく理解していた彼は、研究所の成果を収益性の高い製品へと活用する仕事に注力しています。

ネイサン・ミルボイド は マイクロソフト・リサーチ で、監督者型CTOの特性を示しました。彼は業界を牽引するソフトウェア開発者でありながら、独占的な地位を持ったマイクロソフト製品に新技術を導入する仕事を担当しています。この仕事はアカデミックの研究者と顧客を結びつける協業を推進しました。音声や視覚インターフェイス、機械翻訳、スパムフィルター、先進インターネット技術、マルチメディア等、新しい技術が将来のマイクロソフト製品として開発されました。

研究開発部門を率いるCTOは、挑戦的なアイデアと商用化するアイデアを分けて考えられるようにならないといけません。実際、研究者は学問的に重要なプロジェクトに注力してしまう傾向があります。しかし、CTOは戦略的な計画に基づき、新しい技術を市場に送り出す義務があります。CTOは優れた技術が効率的に製造され、競争力のある価格を持ち、顧客に届き、そして、顧客の役に立つ製品であることを確認する必要があります。

 

経営者型CTO: 他の経営陣であるCEOやCFOと協業し、イノベーションを実現する

大企業では、製品やサービスの重要なコンポーネントを技術が担っています。そのためCTOはイノベーションのプロセスに責任を持つことになります。IBMのような大企業では、技術開発における戦略的な意思決定を行うのに CTO を任命しているのです。このフェーズで活躍できるCTOは、イノベーションや研究・実験を管理・監督できる実務家であり、企業の売上や競争優位を作り上げるのに興味を示します。

経営者型CTOは、若い頃に研究開発に携わった後、経営戦略へと興味を移した人材が該当します。彼らはCFO、COO、CIOといった他の経営層と協業し、事業を管理する役割を担います。

ロッキード・マーティンの CTO だったマルコム・オニールはエグゼクティブ型 GTO の一例です。彼は研究プロジェクトに責任を持つと同時に、企業の製造・計画管理・ミッション・実装と密接に関わっていました。彼の役割は研究開発の業務を大きく超えたものです。彼は研究から製造・サービス・契約管理といった世界中13万人の従業員が、技術やアイデアを交換し合うのを促進しました。

 

調停者型CTO:安定した業界や大手企業で、製品戦略や競争戦略を推進する

FedExのCTOログ・カーターはグローバルな輸送会社の IT インフラを大きく改革したものとして、ITコミュニティから多くの賞を受けました。同社は70%以上の顧客が電子的な取引を用いて小包を郵送している傾向を特定し、顧客のユーザー体験を改善したため、その効率性・収益性・市場シェアを大きく改善しました。

カーターは 調停者型のCTOとして、顧客の体験に焦点を絞り活動していました。このタイプの CTOは、しばしば小売やサービスビジネス、政府機関に見られます。これらのCTOは技術の創造を指揮する立場にはありませんが、特定のビジネス領域において最適な製品を選定する役割を持ちます。

政府機関や大企業ではCIOがIT技術の統合や調達を担当していました。CIOは社内の情報システムに責任を持ち、CTOは顧客や製品戦略、競争戦略に焦点を当てるべきだという考えがあります。

 

CTOを任命しないケース:技術で競争優位を作り出す可能性を見逃していないか?

最後にCTOは不要であると意図的に判断した企業の例を取り上げます。これらの企業の多くは安定して持続している事業であり、技術との関連があまりない業界です。そのため安定的なソリューションが既に定義されています。

しかし、これまで技術を使っていなかった分野で、CTOが最新技術を適用し、改革を促す場合があります。例えば、スーパーマーケットが肉や野菜の売り上げを向上させるのに、技術が使えるのでしょうか。POSシステムは最新の情報システムであり、在庫管理や売り上げ予測は重要な技術要素です。店舗に設置したタブレットで注文を容易にして、ユーザー体験を向上させるといったシナリオを実現するには、CTOの協力が必要となるかもしれません。

CTOは全ての会社が持つべきものというわけではありませんが、採用していない企業は技術の力で競争優位を作り出す機会を見失っているリスクがあるのです。

 

まとめ

わずか数十年でCTOという新たな経営層のポジションが生まれてきました。CTOの役割は、企業の特徴やフェーズに極めて依存しているので、このポジションについて共通的な定義をするのは難しいとされています。上記のパターンは全てを網羅しているわけではありませんが、これからCTOを目指す人の道しるべになり、また、CTOについての理解を深めるものになり得ます。

タイトルとURLをコピーしました