CTOに求められる役割は、ベンチャー企業の成長フェーズに応じて変わっていく

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CTOの視点

CTO の役割は、事業が拡大するにつれて変化していきます。スキルと注力するべき分野はフェーズによって異なっていくものです。一方で、いずれのフェーズでもCTOは技術とビジネスの間を取り持つ役割であるのも事実です。本記事では事業が成長していく各段階で求められるCTOの役割と責任について解説します。

 

0. アイデア段階:共同創業者としてアイデアを形にしていく

ベンチャー企業が事業として確立する以前は、そこにはアイデアしかありません。このフェーズでは一般的に、ビジネスに強い起業家と技術に強いエンジニアが共同創業者として事業アイデアへの理解と実験を繰り返していきます。ブレーンストーミングを実施、ビジネスモデルと製品が持つべき機能を評価していきます。エンジニアは、CTOとして製品アイデアの技術的な実現可能性を評価し、より良い技術的なプラットフォームを選択する作業に責任を持ちます。

CTOは独自のビジネスモデルを確立するために、ビジネスと技術の双方への理解が必要です。また、事業が立ち上がる前の段階では、給与が十分に支払われるケースが稀なので、金銭的な見返りは後回しにし、ビジョンへの共感が優先されます。

 

1. 創業フェーズ:アジャイルプロセスを定義し、MVPの開発を主導する

ベンチャー企業を立ち上げる局面において、CTOの役割は、製品が素早く開発され、反復的な改善を行う点にあります。実際に製品を利用するユーザーからフィードバックを受けるため、最低限の機能を持ったプロトタイプMVP(ミニマル・バイアブル・プロダクト)を開発します。これらの手続きはアジャイル開発手法に準拠し、最適なプロセスの定義を実施します。この段階ではCTOはエンジニアを兼務します。

 

2. 安定化フェーズ:開発インフラを整え、採用や企業文化のプロセスを確立する

プロダクト・マーケット・フィット、つまり、どの顧客に何の価値・機能を届けるかが明確になった後は、CTOの責務はミニマム・バイアブル・プロダクトを作り直し、ソフトウェアを洗練させていく点に移ります。創業フェーズでは、素早く反復的な開発を行うため、拡張性を犠牲にし、簡便な実装で済ませてしまうケースが多くあります。このような過去の技術的な意思決定は「技術的負債」と呼ばれ、事業が成長する中で、修正していく必要があるのです。具体的には、アーキテクチャー、プログラム言語、フレームワークなどを見直します。

開発プロセスに関しては、インフラストラクチャーを監視し、拡張性を担保します。また、自動化を進め、テストやリリースを簡単に行えるようにします。品質管理やCI(コンティニュアス・インテグレーション)に注力し始めるのも、このフェーズです。

この段階では開発チームの規模も10人程度になります。そのため、CTOは純粋に技術的な作業から、管理やコミュニケーションへと求められるスキルが変わっていきます。プログラミングに長けた人材よりも、多様な人材と会話し、組織構造やビジネス課題に興味を示す人材がCTOに向いています。採用や人事管理、新入社員教育、企業文化の醸成といったタスクが中心になっていくからです。

前のフェーズでCTOを務めていた人が、エンジニア出身の場合、この局面で持っているスキルと求められる役割にギャップが生じる可能性があります。事業の成長に応じて、学習し、スキルを学び直す態度が求められます。また、管理が苦手な場合は、それが得意な経営層と責任を分け合う考え方もあります。しかし、役割の変化についていけない、あるいは変化したくない場合、研究開発部門のリーダーのようなCTOとは異なる役職を任命した方が良い場合もあります。

 

3. 拡張フェーズ:複数チームを束ね、チーム間のコミュニケーションを円滑にする

開発プロセスや営業プロセスが確立し、企業の課題は成長と拡大へ移る段階になりました。この頃には、複数の製品ラインが生まれ、チームが分割されるようになります。チームの規模は10人から50くらいまで拡張していきます。CTOは各製品ラインが並行して作業できるように、各チームのリーダーを育てていきます。また、製品開発担当者がビジネス上求められる機能を洗い出しロードマップの作成に責任を持つようになるので、CTOはその実現を支援します。エンジニアリング担当を雇って、日々の開発プロセスの管理を委任するケースもあります。

拡張フェーズCTOの役割は、業界や製品の特徴、企業文化によって影響される可能性があります。研究開発の色が濃く専門性の高い事業では、CTOは新技術によって新製品を作りだし、ユーザー体験を向上させることに注力していきます。また、生産プロセスが重要な業界であれば、プロセスや品質の管理が競争優位につながるため、CTOは管理系に注力するようになります。また、COOやCFOといった他の経営層と協力して、戦略的な意思決定を行う場面が増えます。

 

4. 独占フェーズ:長期的な競争優位を生み出す技術的な機会を見出し経営戦略を立案する

ベンチャー企業が急激な成長を遂げ、ニッチな市場を独占する時期になると、開発チームは数十人から数百人まで膨れ上がります。CTOは直接エンジニアを指導できないので、各チームリーダーから報告を受ける立場へと変わります。多くの情報サービスでは、フロントエンド・バックエンド・テスト・ユーザーエクスペリエンス・製品開発・インフラといったチームが生まれています。各チームの責任者を育て、開発プロセスの整合性を取ります。

CTOは長期的な技術的ビジョンに責任を持ちます。競合製品や技術トレンドに注意を払い、自社が向かうべき方向性を定め、競争優位を保てるよう努めます。新市場の創出・参入には技術への深い理解が欠かせないからです。例えば、FacebookがOculusを買収し、ハードウェア開発に参入したのは、VR(仮想現実)の市場が同社にとって重要となる判断したからでしょう。CTOは技術的な視点で経営戦略の立案に責任を持ち、将来の収益につながるよう意思決定を行います。

 

まとめ

ベンチャー企業は短い時間で急激な成長を遂げることが義務付けられているため、その成長フェーズに応じて、求められる役割もまた、急激に変わっていきます。CTOの場合、初めのうちはエンジニアとしてプロトタイプ開発を主導していたところから、徐々に採用や開発プロセスへと責任が移り、やがて、経営層の一人として長期的な技術戦略を任されるようになります。CTOを目指す人は、どのフェーズが得意であり、興味があるかを認識しておく必要があるのではないでしょうか。

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