GAFA(ガーファ)は、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとった造語で、現代人の生活を支配する企業として表現されるようになりました。普段の生活を考えても、何か知りたいことがあれば、iPhoneを取り出し、Googleで検索し、Amazonで購入して、Facebookで感想を共有する、といったシナリオが容易に想像できます。
米国の時価総額ランキングを見ても、これらの企業群は当然のように上位を占めています。現代のビジネスを語る上で、これらの企業のビジネスモデルを理解せずにはいられません。GAFAにマイクロソフトを加えたGAFAM、代わりにNetflixを加えたFAANGといった言い方もあります。
世界中の人々の生活を支配するテック企業のビジネスモデルは様々な側面で説明が可能です。例えば、利用者と提供者をつなげる「プラットフォーム」や、膨大なデータを集積して知見を見出す「ビッグデータ」「人工知能(AI)」といった特徴は、これらを理解する上で欠かせません。
GAFAが支配する現代を理解し、さらに、今後の10年を生き抜くため、特に若い社会人が読んでおくべき良書を以下に紹介します。
the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
GAFAという言葉を有名した一冊です。経営戦略やマーケティング、ブランド、人材といった多面的な見方から、各社が成長している理由を考察しています。独特の解説が印象的であり、GAFAは脳・心・性器を標的にしているという表現は強烈です。また、GAFAに共通する要素として、①商品の差別化、②ビジョンへの投資、③世界展開、④好感度、⑤垂直統合、⑥AI、⑦キャリアの箔づけになる、⑧地の利といった要素が示されています。経営やITを専門にしていない人には馴染みのないポイントかもしれませんが、そう思った人こそ、本書が適していると思います。GAFAに続くベンチャー企業や、GAFA以降の世界で生きるためのスキルを論じた章は若い人が良く考えておくべきことだと感じました。
デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来
本でも電化製品でも、あらゆるモノが変えるAmazon。人々の生活を便利にした一方で、小売店は大きな脅威にさらされています。わざわざ足を運んで商品を手にとる価値が提供できない企業は、次々と淘汰されてしまうのです。この現象は「Amazonによる死(デス・バイ・アマゾン)」と呼ばれ、様々な業界が影響を受けてきました。高級スーパーのホールフーズを買収してリアル店舗に進出、レジなし店舗Amazon Go、医薬品通販への参入など、アマゾンのニュースは数えきれない程、報じられています。
デス・バイ・アマゾンは、同社の動向を解説した上で、アマゾンに対抗するウォルマートやコストコ、ユニクロの競争戦略を振り返っています。特に、リアル店舗の技術革新、ボイスコマースで急速に変化するオムニチャネル、「宅配クライシス」でますます激化するラストマイルの争い、「プライム」とそれに対抗するサブスクリプションサービスが特集されています。
Amazonの利益において重要な柱となっているのがAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)と呼ばれるクラウド事業だという事実を知っていますか?普段からアマゾンを使っていても、ビジネスモデルの観点からは知らないことも多いのかもしれません。
How Google Works
管理者の視点からGoogleの手法を解説した一冊です。経営者としてGoogleを成長させたエリック・シュミットが著者となっています。同社は独特な経営手法で有名です。例えば、自分の時間の20%を個人的なプロジェクトに使える「20%ルール」はよく知られており、エンジニアの独創的なアイデアが、Googleマップ等の製品につながってきました。
本書では、優秀な人を集めて自由にやらせる、という企業文化が語られており、それが世界を支配するほどインパクトのあるGoogle製品につながった点が感じられます。Googleが大切にしている「スマート・クリエイティブ」は、職務や組織に縛られず自分のアイデアを実行に移す、専門スキルを事業の成功に結び付ける、競争心が旺盛で努力を欠かさない、自分自身が実験台、失敗を恐れない、自発的、オープンといった特徴で定義されています。
スマート・クリエイティブは、Googleに限らず、21世紀に活躍する人材が持つべき要件となっていくのかもしれません。高度プロフェッショナル人材の議論もいいですが、世界はもっと先を行っているのではないかと感じさせます。若手も管理職も参考にするべき点は多いと思います。
マイクロソフト 再始動する最強企業
マイクロソフトはGAFAに比べると、一世代前の古びた企業と見る向きがありましたが、2014年に新CEOとしてサティア・ナデラが就任して以降、また革新の道を歩み始めました。消費者向け事業に強いGAFAに比べ、B2B事業で大きな収益を持つマイクロソフトは収益が安定し、投資家からの評価が高いのが特徴です。
WindowsやOfficeのライセンス販売から、クラウドサービスのサブスクリプション販売へとビジネスモデルを転換した点は、特筆すべきものです。これほどの大企業が、自社の在り方を変えるのは並大抵のことではありません。1990年代のIBMの復活になぞらえる向きもあります。
本書は日米幹部への取材を踏まえて、変革するマイクロソフトの戦略を解説します。「ポスト・スマホ時代の覇者」と目される企業の秘訣はどこにあるのでしょうか。
フェイスブック 不屈の未来戦略 (T’s BUSINESS DESIGN)
フェイスブックの成功譚は多くの媒体で語られています。映画「ソーシャルネットワーク」や類書「フェイスブック 若き天才の野望」は人気を集めました。本書は、広告ビジネスのディレクターを務めた著者が、より客観的な視点で、同社の成功や失敗のエピソードを紹介し、戦略的な分析を行っています。
フェイスブックの特徴は「世界をよりオープンにつなげる」というミッションであり、それは人の心をつなげるということでもあります。徹底したユーザー視点と、何としてもグロース(成長)を実現する製品戦略が、そのミッションを形にしてきたのでしょう。ミッションのもとには優れた人材が集まり、それがさらなる成長へとつながっていきます。
広告ビジネスで巨大な帝国を創り、WhatsApp、Instagramといった企業を買収し、競合企業は徹底的につぶしていく経営戦略は見事です。キャズムやコア・プロダクト・バリューといった具体的な製品戦略も参考になります。
桁外れの成功を収めたベンチャー企業の成功と失敗は、日本から企業の成長を目指す人に大きく参考になると思います。
アップルのデザイン戦略
GAFAの中でもAppleが抜きんでているのは、そのブランド戦略です。iPhoneやMacbookといった製品のデザインが優れているから買いたい、あるいは、皆が持っているから自分も持ちたいと思わせるのは、Appleのブランドがなせる業です。製品だけではなく、洗練されたデザインをしたアップル・ストアなど、全てのチャネルで統一したユーザー体験を実現しています。Appleには創業者スティーブ・ジョブスのDNAが残っているとっても過言ではないでしょう。
そのスティーブ・ジョブス以降のAppleが進めてきたブランド戦略、デザイン戦略を解説しています。製品内部から箱に至るまで、Appleのモノづくりを俯瞰し、新型iPhoneの未来予測が語られます。
スマートフォンやタブレットといった分野を創造し、牽引してきたのはAppleです。ハードウェア製造で差別化できるのはGAFAの間でも強みといって良いでしょう。Appleファンのみならず、マーケティング戦略・製品戦略に興味のある人に適した一冊です。
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
GAFAに限らず、UberやAirbnbといった近年、成功を収めている企業の多くは「プラットフォーム」としての特性を持っています。プラットフォームとは買い手と売り手を結びつけるビジネスモデルです。本書では、プラットフォーム型ビジネスの理論や、その事業を立ち上げる際に成否を分けるポイントが整理されています。
プラットフォームでは、創造する、結びつける、消費する、対価を支払う、といった取り引きがなされます。極めて拡張性の高いシステムにより、膨大な参加者にも、このような事業が成立するようになりました。さらに、プラットフォームが円滑に運営されるために、オーディエンス機能、マッチメーキング、中核的ツールとサービスの提供、ルールと基準の設定といった条件が指摘されています。
プラットフォームが成立する条件や、成功した企業に共通する特徴を理解した上で、これから現れてくるビジネス・チャンスをプラットフォーム視点で考えてみると面白いと思います。本書でも、医療・IoT・金融、ブロックチェーンといった分野が影響を受ける可能性があると指摘されています。
まとめ
GAFAは現代のビジネスを理解する上で欠かせない企業群です。これらの理解なしには、UberやAirbnbといった新興企業の躍進も、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの群戦略も語ることはできません。2018年8月には米企業として初めて、Appleが時価総額1兆を突破し、Amazonやマイクロソフトも追随しています。ビジネスモデルの観点から見て、今、私たちは歴史に残る企業たちの活動を目にしているのだと思います。