「現代の魔法使い」落合陽一を理解するためのおススメ書籍5選

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経営戦略・イノベーション

落合陽一氏は多くの肩書きを持っています。筑波大学の教員でありながら、研究成果を実社会につなげるため会社を創業し、ピクシーダストテクノロジーズのCEOを務めています。その研究は「魔法」と言えるようなデジタルアートを中心にしており、超音波によって物体を浮遊させたり、空中に点音源を作ったりする作品を発表してきました。音や光といった波動を専門にしているのが特徴です。

最近はメディアへの露出も増え、一般の人からも注目を集めています。落合氏は単なるコメンテーターではなく、研究者・教育者といった、多くの顔を持っているのです。内閣府知的財産戦略推進事務局、国立研究機構JST等、普通の大学教員では考えられないほど、多彩な活動を見せています。落合氏の研究は筑波大学の研究室Webサイトから閲覧できます。

多彩な活動の中には、複数の書籍執筆も含まれます。落合氏の芸術や歴史にわたる深い造詣を示し、また、AI時代に合わせた働き方について示唆に富む論考が見られます。研究者ということもあり、専門的な文章が多く、理解するのは簡単ではありませんが、未来について考えるのに役立つ書籍です。

デジタルネイチャー: 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂

私がデジタルネイチャーの概念に触れたときに思ったのは、バルセロナのサグラダファミリア大聖堂です。ガウディによる設計が有名なサグラダファミリアは、自然の仕組みを取り入れています。木々や葉っぱの様を建築要素に組み込んだ上で、大規模建築に耐えられる性能を達成しました。そして、そのデザインには宗教的な意味が与えられ、あらゆる要素に意味を与えています。ガウディの時代は職人が石を削っていたものの、現代は3Dプリントを使い、最新技術が効率化を実現しました。現代技術、自然、工業、宗教が一つになった例だと感じました。

デジタルネイチャーは、技術の発展により、自然とデジタルの区別がつかなくなる事象と理解しました。そして、本書は、デジタルネイチャーの時代に起こり得る社会の変化や個人の心構えについて解説した思想書です。例えば、AIは仕事を奪うといった過度に単純化した議論を超え、機械の指示に従って働くベーシックインカム的な世界と、リスクをとって意欲的に働くベンチャーキャピタル的な世界は、興味深いものでした。

私はUberのビジネスモデルは、この分断した世界を表していると思いました。Uberの運転手はアルゴリズムに従って配車の指示を受けます。一方で、富を築くのはUberを創業した起業家や投資家になるのです。どちらが良いか簡単に言えるものではありませんが、これからの世界について考えさせられる指摘でした。

魔法の世紀

魔法の世紀は、デジタルアートの歴史を振り返り、コンピュータが普及した現代のアートについて考察しています。20世紀は映像の世紀だとした上で、21世紀は魔法の世紀だと定義しました。SF 作家アーサー・C・クラークの「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」という言葉を紹介した上で、「原理の無意識性が魔法の最大の特徴」と指摘しています。

落合氏の作品はYouTubeに投稿されています。その研究内容を見れば、魔法だと述べている意味がすぐに理解できるのではないでしょうか。

落合氏は最終到達点を「コンピュータ科学という名の統一言語で、知能・物質・空間・時間を含む、この世界のありとあらゆる存在と現象が記述され、互いに感応し合うこと」と述べました。2015年に書かれたこの本が、2018年に出版される「デジタルネイチャー」へとつながっていくのです。

働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ~

学生や新社会人の方々には必読の書です。新しい時代に必要なスキルや考え方について示唆に富む指摘があふれています。現在の学校教育では不足している部分を鋭く切っている書籍だと思いました。

「コンピュータになくて人間にあるのはモチベーション」「自分が解決したいと思う小さな問題を探せ」「魔法をかける人になるか、かけられる人になるか」「『なぜ、いまの時代に価値を持っているのか』を考える」「新しい問題を発見して解決するのは、『勉強』ではなく『研究』」印象的なフレーズを抜き出すだけでも多くのものが見つかります。

ベンチャー業界にいる私としては強く同意できるものが多かったと思います。Wikipediaを始め、インターネット上に知識があふれる現代では、意欲をもって実践し、経験を積み重ねる取り組みが違いを生みます。リスクをとった起業家・投資家がリターンを得る時代であり、人の言うことを聞いているだけの人は企業に搾取される恐れがあります。

本書は100年生きる時代に欠かせない心構えについて理解を深められる一冊だと思います。

日本再興戦略

教育者及び研究者としての落合氏が垣間見れる、これからの日本への提言が「日本再興戦略」です。過去では通用した考え方が現在には合致しなくなっている現状から、欧米とは何か、日本とは何か、そしてテクノロジーが社会をどう変えるかを論じています。政治・教育・仕事といった多岐に亘るテーマに関して、落合氏の考えが述べられました。

欧州に住んでいる自分としては、欧州と米国は別物であり、欧米という概念が存在しないという指摘は納得できました。欧州だけでも各国、あるいは各地域で全く異なる文化を持っており、その良いところだけ真似しようとしても、存在しないものをロールモデルにする結果に陥ります。社会のデザインは、教育・歴史・政治・経済など、全てが結びついているので、その文化固有のデザインを行う必要があります。

西洋的なワークライフバランスに関して、ワークアズライフを推奨する点も好感が持てました。欧州は労働者の権利意識が強く、生きるために仕事をする、残業は行わず、ストライキも多いという特徴があります。日本にはあまり合致しない考え方で、仕事を楽しみながらストレスなく生きるという提案に刺激を受けました。

超AI時代の生存戦略

AIによって働き方が変わるといった議論は、様々な識者によってなされています。落合氏にかかれば、研究者としての考察が加わり、新時代で価値を発揮し続けるための考え方がアップデートされます。

「人間にとってエモいこと以外は、すべてコンピュータにやらせればいい」「仕事になる趣味を3つ持て」「『ワークとライフ』の対比で捉えるのではなく、『報酬とストレス』」「『ググればわかる』というレベルの状態で頭の中に保持しておく知識の付け方がすごく重要」今の若い世代には刺さる言葉が並んでいます。

個人的には、自分の意欲を維持するために余暇を見直したいと考えていたところ、落合氏の「報酬」の考えが参考になりました。射幸心としての「ギャンブル的な報酬」と、収集欲としての「コレクション的な報酬」。それと、より体感的な「心地よさの報酬」があると指摘しています。自身の余暇時間・予算をそれぞれ振り分けるよう考えたいと思いました。

まとめ

落合陽一氏の本は研究者としての色合いが強く、理解しやすいものではありません。また、独特のキャラクターは賛否両論を呼ぶ場合もあります。同時に、研究や企業経営の分野で最先端を走る同氏の論考は、未来を考える上で示唆に富むものです。日本をどうするのか、これからの働き方はどうするのか、落合氏の本を読み、考えてみるとよいかもしれません。


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