なぜDockerが多くの開発現場で取り入れられるようになったのか?
アプリケーションの開発・実行環境はエンジニアにとって悩みの種となります。新しく開発プロジェクトに参加した時に環境設定だけで数日かかってしまったり、ローカル環境では動作したアプリケーションが本番環境では動作しなかったりといった不便を感じるケースは、多くのエンジニアが共感するのではないでしょうか。コンテナ技術はこのような不便を解消させるものとして期待が集まってきました。
Dockerはコンテナ技術の代表的なものであり、仮想環境を作成・配布・実行するプラットフォームとして標準的な地位を獲得しつつあります。設定ファイルや必要なライブラリをコンテナに保存し、どの環境でも開発したアプリケーションを実行できるのがメリットです。移植や、廃棄してからの再作成も容易なので、環境設定の柔軟性が増します。
Dockerはアプリケーション開発者の作業効率を高めるため、学ぶべき必須のスキルとなっていくでしょう。特に、仮想環境でアプリケーションを実行するクラウド・アプリケーションでは、Dockerの利用が前提となる場合があります。さらに、Dockerのようなコンテナを自動で管理するKubernetesや、CI/CD(継続的デリバリー・継続的インテグレーション)を実現するJenkinsといった技術と組み合わせると、先進的なDevOps環境が整えられるようになるでしょう。
開発エンジニアやインフラエンジニアの中でDocker技術を習得したいと考える人は多いのではないでしょうか。全くDockerに触れた経験のない人は、初級者向けの書籍で、その仕組みやコマンドを習得するのがおススメです。また、Dockerを活用して開発環境・DevOps環境を高度化させたいエンジニアには中級者向けの書籍が適しています。
Dockerの勉強方法
Dockerを学ぶ際には、その基礎的な概念を理解する必要があります。Dockerはコンテナと呼ばれる仮想化技術に基づいており、他とは隔離した環境に、アプリケーションの実行環境を構築し、稼働させるのが特徴です。異なる環境で実行させる場合でも、移行するのが容易で、再現性を維持するのが容易になります。コンテナ技術の中でも、Dockerはその軽量さによって多くの技術者から支持されてきました。
Dockerは仮想的な実行環境となるので、はじめて扱う人にとっては、その概念が分かりにくいと感じるかもしれません。そこで、座学での学習を突き詰める前に、実際にコマンドを入力してDockerを動かしてみることで、その価値を早めに理解する学習方法が推奨されます。Dockerは起動させるだけでは意味がなく、そのDocker上でプログラミングを開発・実行することで価値が発揮されるものです。自分の手で動かしてみると、なぜDockerが必要とされているか実感できるでしょう。
Dockerの学習を進める際には、Webサイトや書籍から、コマンドを含めた基礎的な操作方法を学び、実践していくのがおススメです。動画やオンライン講座を通じ、実際に操作する流れを見てみる方法もあります。
システムの開発と運用を効果的に進めたいエンジニアに向けて、DevOpsの理論・実践からツールの活用に至るまで、様々な書籍が出版されています。短いサイクルで製品をリリースして顧客からフィードバックを頻繁に受けるため、開発計画から実装・テスト・デプロイを含めたライフサイクルを自動化して、ユーザーへの価値提供をスムーズに行うことを目指します。
Kubernetesはコンテナ・オーケストレーション・ツールと呼ばれます。クラウド環境でコンテナを柔軟に実行する環境では、Kubernetesは欠かせない技術になってきました。この新しいコンセプトを理解するため、Kubernetesは何であるか、なぜ必要とされるのかを理解する必要があります。書籍のまとまった情報を咀嚼しながら、Web上で最新情報を追っていくと、効果的に学習が進むかもしれません。
おすすめ
Docker実践ガイド
サーバー技術者やシステム管理者、コンテナで動作するアプリケーションを開発するエンジニアを対象に書かれた、Dockerの実務的な利用を目指す技術書です。まず、Dockerの導入準備や動作環境、基本操作やネットワーキングについて解説します。基礎的な事項の確認を通し、インフラ構築の自動化や本番環境へのデプロイを省力化する方法などの理解を目指します。さらに、商用版Docker EEや複数コンテナの管理を行うKubernetesなどの解説を行い、大規模な商用システムでも対応できる運用方法を実践的に学ぶ構成になっています。
プログラマのためのDocker教科書
教科書というタイトルが示す通り、インフラに関する基礎知識を網羅し、基礎的なコマンドの解説を行います。開発・実行環境を実際に構築して、コンテナを使ったインフラ構築の流れを体感していくのが狙いです。インフラ構築の自動化を経験したことがないエンジニアを対象に、コードでインフラ環境を構築するという新たなコンセプトを紹介していきます。
対象者:初級者向け
ITエンジニアになる! チャレンジDocker仮想化環境構築入門
IT基盤の構築を専門とするインフラエンジニアの初級者を対象にした、Dockerの入門書です。インフラエンジニアの役割について述べた後、Dockerの起動方法、ビルドの自動化、コンテナ間ネットワーク設定、Dockerのファイル管理といったテーマを丁寧に解説していきます。また、Ruby on RailsのアプリケーションをAWS(Amazon Web Services)にデプロイする手順など、実践的な内容を含みます。
仕組みと使い方がわかる Docker&Kubernetesのきほんのきほん
イラストやハンズオンでの演習を豊富に含めたDockerの入門書です。Dockerの機能を一通り体験した後、複数のコンテナ同士で通信したり、データをコンテナの外部に保存したりと、現場で使われやすい状況に対応しているのも利点です。
さわって学ぶクラウドインフラ docker基礎からのコンテナ構築
技術解説書よりも技術実践書をうたった入門書で、ハンズオン演習に重点を置いています。初学者がつまずきやすいポイントを避けながら、実践でつかえるようコンテナ環境を構築できるよう学習を支援してくれます。
対象者:中級者向け
Dockerによるアプリケーション開発環境構築ガイド
Dockerの初心者から中級者を対象に、開発環境構築のノウハウやベストプラクティスを集めた技術書になっています。Dockerの基本的な使い方を振り返った後、オンプレミス環境からDockerイメージを構築したり、ローカルのDocker環境を本番環境にデプロイしたりと、実際の運用でありそうなシナリオで、実践的なスキルを磨いていくことができます。
試して学ぶ Dockerコンテナ開発
前述した「Dockerによるアプリケーション開発環境構築ガイド」に続き、同じ著者が執筆した書籍であり、Webアプリケーション開発をどのように構築し、その作業をいかに効率化させるかにフォーカスした内容になっています。PHP、Node.js、Rubyといった有名なプログラミング言語を取り上げ、それらの実行環境を構築・カスタマイズする方法を解説します。
基礎から学ぶコンテナセキュリティ――Dockerを通して理解するコンテナの攻撃例と対策
コンテナは独立した仮想環境であり、他のアプリケーションから隔離されていると言われます。しかし、適切に対策していなければコンテナもサイバー攻撃にあい、より広範囲に被害が広がる恐れもあります。本書は、Dockerを日常的に利用しているエンジニアに向けて、コンテナの仕組みや主要な攻撃ルート、そして、安全性の高いコンテナ環境を構築する方法について解説しています。実際の実行コマンドを含め、堅牢なコンテナイメージを作り、運用する流れを説明しているのが特徴です。本番環境でコンテナ環境を構築・運用しているエンジニアにとって、コンテナセキュリティは必須の技術となっていくでしょう。
まとめ
Dockerはアプリケーション開発の環境を大きく変え、エンジニアの負担やつまらない作業を大幅に削減してくれます。急速に伸びている分野であり、これからも技術の進歩は進んでいくでしょう。Dockerは、それだけで用いるものではなく、KubernetesやAWSといった関連技術を踏まえて、開発環境やDevOps環境の構築に活用することになります。Dockerを理解するには、ハンズオンの演習を交えて学習を進めることが推奨されます。ここで紹介した書籍は中級者向けのものが多かったので、はじめはWeb上で基礎的なコマンドを理解し、その後で本を購入するようにした方が良いかもしれません。
Dockerについて学んでいると、Kubernetesについても触れる機会が多くなります。コンテナを使ったアプリケーション運用に関するタスクを自動化するのがKubernetesの役割となります。例えば、Webアプリケーションへのアクセスが急増し、サーバーを一時的に増強させる場合でも、Kubernetesがあれば立ち上げたサーバーにDockerコンテナーをデプロイし、すぐにアプリケーションを立ち上げるといった使い方が考えられます。また、複数の環境にあるアプリケーションを更新する際に、ダウンタイムを作らないよう、1つずつ新しいバージョンに切り替えて、途中で問題が発生した際にはロールバックする機能もあります。他にも、負荷分散やセルフヒーリング(自己回復)といった高度な機能も提供されています。これらの機能を理解すればDockerを活用したアプリケーション開発・運用をスムーズにできるようになるでしょう。
Dockerはマイクロサービスアーキテクチャーの一部として利用されるケースがあります。マイクロサービスとは、一部の小さな機能を切り出して独立させる考え方で、疎結合によって設計をシンプルにすることを目指します。その機能をコンテナ化しておけば、アプリケーションが大規模になっても、柔軟に対応できるのが利点です。アプリケーション開発・設計に興味のある人は、このような設計手法について学んでみてはどうでしょうか。
Dockerが本番環境で用いられるケースが増えるに従い、セキュリティへの要求が高くなってきました。コンテナの設定不備を悪用してサイバー攻撃を受けてしまったり、それによってホスト環境までが不正侵入されたりする恐れがあります。ファイルアクセスや実行権限の設定や、ログの記録・監視については十分に注意する必要があります。また、Kubernetesについてもセキュリティを意識した設計をしなければなりません。
DockerはDevOps環境にも活用されます。DevOpsでは、新機能を実装する開発チームと、アプリケーションの安定稼働を目指す運用チームが効率的・効果的に協業する取り組みと言われます。特に、テストやデプロイを再現性のある環境で自動化するよう、コンテナを活用したCI/CD環境を構築するチームが増えているのです。テスト環境と本番環境で同じアプリケーションをデプロイするといった場面で、コンテナ技術は極めて有用です。
Docker ドキュメント日本語化プロジェクト
Dockerのチュートリアル及びリファレンスについて、日本語訳がオンラインに公開されています。コンテナ技術に明るい人は、こちらのドキュメントを利用すると簡単に概要がつかめるでしょう。
ゼロからはじめる Dockerによるアプリケーション実行環境構築
オンライン学習プラットフォームUdemyでも、Dockerを解説するコースが公開されました。本で読むよりも、動画で見た方がコンテナの新しい概念を理解し、そのコマンドを習得するのが早いかもしれません。本コースは、Dockerのインストールからコンテナの実行、ビルドの自動化、ネットワーク構成、データ管理など、Dockerにまつわる基礎的な事項を網羅しています。
ゼロからはじめる Dockerによるアプリケーション実行環境構築システムの開発と運用を効果的に進めたいエンジニアに向けて、DevOpsの理論・実践からツールの活用に至るまで、様々な書籍が出版されています。短いサイクルで製品をリリースして顧客からフィードバックを頻繁に受けるため、開発計画から実装・テスト・デプロイを含めたライフサイクルを自動化して、ユーザーへの価値提供をスムーズに行うことを目指します。
Kubernetesはコンテナ・オーケストレーション・ツールと呼ばれます。クラウド環境でコンテナを柔軟に実行する環境では、Kubernetesは欠かせない技術になってきました。この新しいコンセプトを理解するため、Kubernetesは何であるか、なぜ必要とされるのかを理解する必要があります。書籍のまとまった情報を咀嚼しながら、Web上で最新情報を追っていくと、効果的に学習が進むかもしれません。