資金繰りは経営上の大きな課題です。悪化する要因は、事業の様々な領域に存在し、改善するためには全社的な取り組みが求められます。具体的には、売掛金の支払い期間を短縮したり、ファクタリングを使った売掛金の早期に現金化したりする手法があります。
■急激な売り上げの増加や、過剰な在庫は資金繰りを悪化する要因となる
資金繰りが悪化する要因は様々なものがあります。まず、売掛金の支払いサイクルが長い場合、現金収入が得られるまで、支払いが続いてしまうため、現金が不足する可能性があります。利益があっても支払いが滞ってしまうと黒字倒産に陥るリスクもあります。また、売掛金の支払いが遅延したり、取引先が倒産して支払いがなされなかったりすると、資金繰りが悪化します。
急激な売り上げの増加も、資金繰りを悪化させる要因になり得ます。業界によっては、受注するために原材料を仕入れたり、外部の業者に作業を依頼したりする必要があります。注文が増えると、顧客からの入金には時間を要するにもかかわらず、支払いが増えるため、手元の資金が枯渇してしまいます。
在庫の管理は、資金繰りに大きく影響があります。注文が増えたときに、売り切れによる機会損失を防ぐために在庫を増やしたいところですが、在庫が増えると、仕入れ及び在庫の管理にコストを要します。在庫を増やしたものの、注文が減ってしまうと、在庫が処分できないため、値引きして販売せざるを得なくなり、長期的に見て利益率が減少してしまうでしょう。
■支払いサイトの短縮やファクタリングの利用によって資金繰りを改善する
資金繰りを改善するのは、経営上の大きな課題です。様々な視点で改善の施策が考えられるので、普段から対応策を考慮しておく必要があります。
売掛金の早期回収は、資金繰りの改善に寄与します。業界の慣習で支払いまでの時間は決まっているかもしれませんが、顧客と個別に交渉して、支払いまでの期間(支払いサイト)を短縮する方法もあります。また、支払いが遅れたり、倒産したりしないよう、顧客とコミュニケーションをとり、場合によっては、事前に経営状態を確認することが推奨されます。一方で、仕入れについては、支払いを遅らせる取り組みが必要です。掛け払いの契約とし、支払いサイトは仕入れ先と交渉します。
売掛金を早期に現金化する手法としてファクタリングがあります。手数料を払う必要がありますが、請求書を買い取る金融サービスによって資金繰りを改善します。
ファクタリングやビジネスローンを必要以上に用いると、結果的に経費がかさんでしまいます。売り上げを増やすための投資として一時的な資金調達するのは長期的な利益につながりますが、現金管理が不十分であるためにファクタリングやローンを使ってしまうと、資金調圧コストが増加し、利益を低下させてしまいます。
現金の収支を管理するため、資金繰り表を作成し、経営状態を細かく診断します。過去の実績を管理する実績資金繰り表と、未来の収支を予測する予定資金繰り表の2種類が存在します。資金不足により機会損失が発生したり、資金繰りの悪化によって資金調達コストが増加したりしないよう、現金の管理を徹底するべきです。
■売り上げの増加を急ぎ過ぎず、無理のない資金計画を立案・実行する
売り上げに注目し過ぎると、資金繰りが悪化する傾向が知られています。在庫を過剰に抱えてしまい、利益を圧迫してしまうからです。在庫が留まっている期間、つまり、在庫回転期間を計算し、適正なレベルに在庫が保たれている点を確認します。
売り上げを増やしたいあまり、過剰な借り入れや投資をすると、少しの不測の事態が生じただけで、資金繰りに問題が発生する可能性があります。営業活動から得られるキャッシュフローの範囲で投資をするように、余剰の現金を保持できるようにします。金利が低く抑えられる長期借入金で投資をするように、留意します。
長期的には、収益性の高い事業構造に変革していくことは、資金繰りの改善につながります。具体的には、固定費を減らし、損益分岐点を引き下げると、利益が出やすくなります。アウトソーシングの利用、クラウドサービスやリースの活用によって、固定費を変動費化する手法もあります。付加価値の高い商品・サービスを提供し、利益率を改善するのも重要です。
まとめ
資金繰りを改善するには、支払いサイトの改善から、ファクタリングの利用まで、様々な手段があります。売り上げに注目し過ぎず、無理のない範囲で借り入れや投資を行うようにし、資金繰りを管理するよう、心がけましょう。