ドロップシッピングは、在庫を持たずにオンライン販売を行う方法で、ECサイトから入った注文を卸売業者が直接、消費者へ届けるビジネスモデルです。ECサイト運営で課題となる在庫管理から解放されるため、低リスクで事業が始められる一方、上手に運営しなければ利益を確保するのが難しいという課題もあります。クラウド上でECサイトが運営できるShopifyを使えば、ドロップシッピングの事業に集中し、その運営も容易になることが期待されます。
ドロップシッピングとは在庫を持たずにオンライン販売を始めるビジネスモデル
ネットショップを運営する上で、在庫管理は避けられません。大量に仕入れを行った後で、思ったように販売が伸びなければ、その在庫は倉庫にしまわれたままになってしまいます。倉庫の管理代もバカになりません。資金繰りも悪化させるので、倒産のリスクも高まります。
ドロップシッピングは、その在庫管理を行う必要がないため、低リスクで事業が開始できる方法として注目されました。オンラインストアで注文が発生すると、卸売業者へと通知され、注文された商品が消費者へと配送される流れです。オンラインストアを運営する事業者は、集客に集中することが可能で、発送や顧客サポートは卸売業者が担当します。どの商品が誰に売れるのかという目利きがあれば、ドロップシッピングの成長を伸ばす可能性が高まるでしょう。
ドロップシッピングを行う際には、ドロップシッピングASPと呼ばれるパートナー企業と提携します。日本では、トップセラー、電脳卸ドロップシッピング、通販素材.com等が有名です。数十万点もの商品の中から、ドロップシッピングに対応している商品を選び、販売を行います。
集客に集中して販売は他社に任せるという意味では、ドロップシッピングは、アフィリエイト・と共通点があります。アフィリエイトの場合、広告をサイトに掲載し、広告をクリックした訪問者が遷移先で商品やサービスの購入に進みます。アフィリエイトに比べると、商品の販売まで自社で手掛けられるため、ドロップシッピングの方が裁量が大きく、また、販売あたりの収益も高くなるのがメリットです。
ドロップシッピングが抱える課題とは
低リスクで事業が開始できるドロップシッピングですが、うまい話には注意するべき点もあります。まず、参入障壁が低いということは、多くの競合企業が集まってくるため、差別化が難しくなり、薄利多売の過当競争に陥る可能性があります。特に、トップセラー等のドロップシッピングASPは、誰に対しても同じ商品を掲載しているため、よく売れる商品は、多くのオンラインストアで取り上げられるようになります。価格以外で差別化する方法がなければ、その競争は厳しいものになり、サイトは作ったけれど、ほとんど売れないというリスクもあります。
売れないというリスクに比べ、予想よりも多く売れてしまい、在庫切れが発生するリスクもあります。同じ商品について複数のドロップシッピングASPと提携すれば、品切れのリスクは減りますが、在庫量の同期は困難です。自社でコントロールできない部分が増えるほど、事業運営は難しくなります。また、ドロップシッピングASPへ依存が大きく、ASPがサービス終了すれば、商品販売が行えなくなり、これまで築いたサイトやチャネルがムダになる場合さえあります。実際、「もしもドロップシッピング」は2020年4月のサービス終了が発表され、多くの影響を与えています。
ドロップシッピングは法令に関する知識も必要です。ドロップシッピングASPの規約により、特定商取引法の表示が求められるケースがあります。また、顧客の個人情報を管理する場合は、個人情報の取り扱いや保護の体制を確立しなければなりません。さらに、Eコマースでは商品が返品されるケースが多くありますが、規約によっては、顧客都合で返品された場合、オンラインストアの事業者がそのコストをかぶる場合もあります。
2009年頃には、ドロップシッピングやアフィリエイトが簡単に儲かる手段として過大に宣伝される問題があり、国民生活センターが注意文を掲載するに至りました。簡単に儲かる手段はないと自覚し、ドロップシッピングの実態を理解した上で、事業に取り組むことが推奨されます。
Shopifyにおけるドロップシッピング。Oberloの利用が推奨される
ドロップシッピングを展開する上で、Shopifyを利用するのは賢い選択肢の一つです。クラウド型のECプラットフォームであるShopifyでは、管理画面から設定を行うだけで、プログラミング無しにECサイトが構築・運営できます。少ない資金でサイトを立ち上げて、ドロップシッピングに適した商品やデザイン、キャッチコピーを見つけるのに、Shopifyは柔軟性をもたらしてくれるからです。
Shopifyでは、簡単にECサイトが作成できます。14日間の無料トライアルの後、月額課金のプランに加入すれば、サイト名からデザインまで、自分の思い通りに設定変更が可能です。自社のドメイン名がつけられるため、サイトのURLが思いのままであり、自社ブランドの下でドロップシッピングが運営できます。無料、あるいは有料のテーマ(テンプレート)を適用すれば、サイト全体に一貫性のあるデザインが適用できるので、デザイナーの力を借りなくても、品質の高いサイトが作成できます。国際的な配送にも対応しており、越境ECも実装可能です。さらに、Shopifyアプリによって、補完的な機能を追加できるのも、Shopifyが人気を集める理由の一つです。
Shopifyアプリの一つにドロップシッピングサービスである「Oberlo」(オーベルロ)が含まれています。Oberloを通じて8500万点の商品が売れたという実績があり、何万点もの商品がドロップシッピング対応となりました。Shopifyの管理画面から、Oberloで扱っている書品を選択すると、商品情報がオンラインストアに反映されます。在庫状況や価格が自動で設定されますが、価格については、自分で変更することも可能です。Oberloには、無料プランから、ベーシック・プラン、プロ・プランと用意されており、受注件数によってアップグレードが推奨されています。Shopifyの月額料金の他に必要となるので、注意が必要です。
Shopifyはソーシャルメディアと連携するなど、複数チャネルでの販売にも強いので、ドロップシッピングのサイトが作成できた後は、積極的なマーケティング施策が展開できます。オンライン広告を使って、販路を拡大する事業者もいるほどです。ただし、顧客獲得コストよりも、顧客が売り上げに貢献する額の方が大きくなければ利益につながらないため、広告を始める前に、確実に売り上げが得られるようなキャッチコピーや広告素材などを検証しておくと良いでしょう。
まとめ
ドロップシッピングは、在庫を持たず、少ない資金でECサイトが運営できるビジネスモデルです。通常のネットショップやアフィリエイトサイトと比べると、中程度のリスクとリターンが期待できる手法と言えます。Shopifyとドロップシッピング・サービスOberloを使えば、管理画面から設定を行うだけで簡単にドロップシッピングが始められるようになりました。ドロップシッピングの事業を拡大する上では、いくつかの注意点がありますが、その欠点を理解した上で始めるのであれば、挑戦してみると面白いかもしれません。