海外で就職するために必要なものはなんでしょうか。英語力でしょうか。私は折れない心だと思います。言語と文化が異なる環境では、多くの人が壁にぶち当たります。カルチャーショックというのは最も良い例です。それ以外にも、日本で日本人と日本語を使っていれば挙げられていた成果が、全く出せなくなることもあります。それでも、しなやかに現実を受け止めて前に進む、あるいは、そもそも期待通りに物事が進まないことをストレスに感じない、ということが重要だと思います。
シリーズ前回の記事は「CAGEフレームワークに基づいた、海外就職しやすい条件 – 海外就職シリーズ(5)」
英語ができても、コミュニケーションの違いは大きい
私は留学中、あるいは就職活動をする中で、「もうダメだ」と思う体験は何度もありました。例えば、英語で一時間ミーティングしたときに一回も発言できなかったときは、自分自身に失望しました。
留学前に英語は勉強していったので、日常会話は問題ありませんでしたが、「あなたの国で汚職がなくならないのはなぜか」といった高度な会話になると、周囲の意見を理解するのも、意見を言うのもままなりませんでした。語学の問題だけでなく、議論の仕方も日本とは異なるので、なかなか議論で発言するのは簡単ではありませんでした。
事務手続きでも絶望を感じることはありました。労働許可の申請に銀行口座が必要でしたが、銀行口座の開設には労働許可が必要、という不可解な状況が発生したことがあります。にっちもさっちもいかず、ストレスを感じました。
日本代表選手に見る、海外への順応の仕方
言葉と文化の異なる環境で働く際の心得は、欧州の第一線で活躍するサッカー選手の意見が参考になるかもしれません。例えば、イタリアで活躍する長友佑都選手は「日本人じゃない。正真正銘のナポリ人」と評されました。イタリア南部に位置するナポリという街の人は、陽気なことで有名です。長友選手は明るい性格を活かして、冗談をいったり、チームメートと踊ったりして、イタリアの文化に素早く順応していきました。異文化という新しい環境に自ら「飛び込む」タイプと言えるでしょう。
一方で、オランダ・ロシア・イタリア・メキシコと活躍の場を移してきた本田圭祐選手は自分のスタイルを崩しません。多くの選手はカジュアルな服装で練習場に出勤しますが、本田選手はスーツです。ロシア料理などの現地の食事よりも、家族での食事を優先しています。「マイペース」なタイプと言えるかもしれません。それでも、英語やイタリア語は習得していますし、サッカーという仕事の上での結果を出し続けています。
さらに、私が最も参考にしているのは長谷部誠選手の著書「心を整える」です。長谷部選手は「心は鍛えるものではなく、整えるものだ」と説きます。自分の強さを信じれば、必要以上に自分に期待し、向上を図る必要はありません。同時に自分の弱さを受け入れた上で、最善の準備をすることで、いかなる状況でも、100%の実力が発揮できます。言語と文化の異なる状況では、心が乱される状況が数限りなくあります。心を整えることで、自分の目標に少しずつ到達することができます。
プロのサッカー選手は、極端に実力主義の世界です。一流選手の流儀は、一般の会社員にも当てはめることが可能です。自分にあったタイプを見極めて、それを参考にするのがよいでしょう。
シリーズ次回の記事は「【体験談】海外で生活し始めて感じた英語の難しいところ – 海外就職シリーズ(7)」