日本からヨーロッパを訪れる観光客の方々を見ていて「信号の渡り方と働き方の関係」について、ある共通点を見出しました。さて、何だと思いますか?
信号をかたくなに守る一方で、危険を冒してでも点滅しているうちに信号を渡る傾向
私が住んでいるバルセロナではたくさんの日本人観光客の方々が訪れます。その人たちの様子を見ていると、あることをしているときに、「日本人らしいなぁ」と感じてしまいます。
私が見つけた日本人の特徴は「横断歩道の渡り方」です。まず一つ目の特徴として、信号を厳格に守る傾向が挙げられます。もちろん、信号を守るのは世界のどこにいても守るべきマナーです。しかし、1キロ先まで見える様な見通しの良いところで、車が全く来なくても赤信号を守っているのは日本人に多く見られる行動パターンだと思っています。
また、二つ目の特徴として、信号が点滅して青から赤に変わり始めた時に、何メートルも離れたところからでも、大急ぎで走って渡ろうとする傾向があります。おそらく、信号を厳格に守るのを前提としているため、今目の前にある青信号を逃したら長い時間、待たなければならないと考えるため、点滅信号のうちに渡ってしまおうと考えるのだと思います。
信号さえ守っていれば安心だと思考停止していないか
日本人観光客の方々に比べると、ヨーロッパの人々は比較的、このような行動が見られません。赤信号でもクルマが来なければ渡ってしまいます。点滅信号のときに焦って駆け込むこともありません。
待っているクルマが1台しかいなければ、その車が走り出した後に、赤信号でゆっくり渡ったほうがかえって安全だと考えているのかもしれません。信号が変わった瞬間に走り出す自動車も多いので、危険な目にあっている日本人を何人もみた経験があります。
私が目にした日本人は「クルマが来ない赤信号で渡らず、クルマが発車する直前の点滅信号で渡る」という行動をとっています。言い換えると、「最も安全なときに渡らないで、最も危険なときに交差点を渡る」という非合理な行動とも言えます。つまり、日本人の行動はルールを過度に守ろうとするがあまり、かえって危険な行動に陥ってしまうのです。
信号を守るのは当然ですが、その意識が無理にでも点滅信号のうちに横断しようという行動を引き起こしてしまうのであれば、考え方を見直す必要があります。信号や交通ルールが設けられているのは、事故を防ぎ、安全な道路環境を守るためです。信号さえ守ればよいと思考停止してしまい、自分の目で動車の動きを確認するのを怠ってしまっては意味がありません。
ここで私は、このような横断歩道の渡り方が、日本人の働き方と関係しているのではないかと考えるようになりました。「ルールを盲信するがあまり、本質を見失う」という働き方です。
ルールを盲信するあまり本質を見失う点が、無謀な働き方につながる
会社のために1分1秒でも多く働こうと言うのは素晴らしい勤労態度ですが、結果として体を壊して長期に休んでしまっては意味がありません。明日、来週に設定された締め切りを死守し続けようとして、3ヶ月・一年と長期に病気を患ってしまっては、結局、休んでいる間の仕事が遂行できなくなります。
他にも、硬直的な職場環境では様々な例が挙げられるのではないでしょうか。例えば、議事録や日報はコミュニケーションを促進するために行うにも関わらず、一言一句にこだわって議事録のレビューを繰り返していると、返って情報伝達が滞ってしまいます。現在働き方が問題になっているのは、ルールを盲信するがあまり、本来の目的を見失ってしまうのが原因ではないかと思われます。
形式よりも成果が重要。でも、ルールをおろそかにすると、やはり問題は起こる
ヨーロッパのベンチャー企業で数年働いた今、海外では、日本に比べて形式よりも成果を重視する傾向があると感じています。態度について周囲が指摘する場面は少なく、仕事に対して情熱的に楽しさを持って臨んでいこうという傾向が強いと思います。
Googleの標語の一つに「スーツを着なくても真剣になれる(You can be serious without a suit)」という言葉があります。形式うんぬんよりも、情熱や楽しさをもって仕事を推進することを重視するのが、欧米、特にベンチャー界隈の文化なのでしょう。
ルールを守らなければ成果が上げられないではないか、と感じる人もいるかもしれませんが、確かに海外の職場環境で起こる問題は多々あります。日本では数日で届くようなオフィス用品の注文も、数か月(!)かかってしまった経験もあります。役所でも手続きを終えるにはすごく時間がかかり、数か月から数年(!!!)かかる手続きも存在するのです。仕事が遅ければ産業も発展していかないので、欧州各国の失業率が高止まりしたままなのかもしれません。
勤勉な日本人、怠惰なスペイン人というイメージは本当か
私が住んでいるスペインでは、シエスタ・昼寝の文化があり、怠惰なイメージが国際的にもついています。しかし、一緒に働いていると、その印象は180度変わりました。
日本では長時間労働が常態化しているので、会議で居眠りをしてしまう人が多く、タバコ部屋で長い時間雑談をする人もよく見られます。一方、スペインでは割と勤勉に働く傾向があります。9時から5時まで働き、たとえ、忙しくても仕事が残っていても時間通りに帰ってしまうのですが、仕事中の集中力は高いと思います。
一人当たりの生産性で見ると日本は低いという議論があります。個人的な感覚としても、日本の生産性は決して高くないという感覚を抱いています。