起業アイデアを洗練させた後は、ビジネスモデルの構造について検討します。何を原材料に製品を開発し、誰から利益を得るのかを考案するのが、ビジネスモデル構築の醍醐味と言えるかもしれません。ビジネスモデルを明示するための技法として「ビジネスモデル・キャンバス」が知られています。
ビジネスモデル・キャンバスは、ビジネスモデルを9つの構成要素に分解し、具体的に行うべきことや検討するべき事項を明らかにします。売り上げからコストまで、価値創出の流れを明確にし、無駄のない事業構築を目指します。
他の実証されたビジネスモデルを参考にすれば、ビジネスモデル・キャンバスで描く事項も似たものになります。どの点が似ていて、どの点が異なるのかを明示すれば、注意深く検討し、実証実験が必要な部分が理解できます。
顧客(CS:Customer Segment)
自社が価値を提供して、対価を得る対象を検討します。年齢、職業、地域、収入など、様々な属性を組み合わせて、具体的な顧客層を定義する必要があります。
価値(VP:Value Proposition)
顧客のニーズや欲求を満足させる要素を見出します。「安く買える」「時間が節約できる」「楽しい時間が過ごせる」といった有形・無形のメリットが価値に含まれます。競合製品と比べて、より優れた価値を提供することで、顧客が喜んでその製品を使うようになります。
チャネル(CH:Channel)
届けるべき価値と、届ける先の顧客が決まったら、それをどのような経路で届けるかを決めます。サービスや商品を顧客へ届ける経路をチャネルと呼びます。店舗で直接販売する、Webサイトで注文を受け付ける、販売員を雇う、楽天などEコマースサイトに登録する等の様々な選択肢があります。
顧客との関係(CR:Customer Relation)
顧客・価値・チャネルの順に、誰に・何を・どこで売るかを検討してきました。次は「どのように」商品やサービスを提供するかを検討します。高額商品や企業向け製品を手に入れる場合、顧客は対面で手厚いサポートを求めることが多いでしょう。日用品を買う際は、極力、手間がかからない方法が好まれます。
収益(RS:Revenue Stream)
顧客へ商品やサービスを届けた後は、それをどう収益につなげるかを確認します。モノを売る場合は商品に対して対価を支払う流れになりますが、サービスの場合、月額使用料のような形態をとることもあります。また、ユーザーには無料でサービスを提供し、広告収入を得る方法も考えられるでしょう。
リソース(KR:Key Resource)
顧客への商品やサービスを提供するために必要な資源を検討します。具体的には、ヒト・モノ・カネ・情報を指します。従業員や知的財産など、事業を運営するために必要な要素です。
主要な活動(KA:Key Activity)
リソースを使って、商品やサービスの提供に伴う主要な活動を定義します。基本的には「作ること」「売ること」に集約されます。「作ること」は社内で製品を製造したり、外部から材料を調達したりすることです。「売ること」は営業活動やカスタマー・サポートが含まれます。
パートナー(KP:Key Partner)
全ての活動を自社でまかなうことは少なく、何らかの外部委託を行います。この委託先をパートナーと定義し、より質の高いパートナーを得ることで、事業を円滑に進めることが可能になります。
コスト構造(CS:Cost Structure)
リソースを確保したり、外部委託を行ったりするには、一定のコストがかかります。材料費・人件費・販売促進費などのあらゆる費用を計上します。そして、コストと収益を比較し、利益を上げられる体質になっていることを確認することで、ビジネスモデルが実行可能であると結論づけることができます。