医療業界でリーン・スタートアップは危険な存在なのか

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CTOの視点

リーン・スタートアップは起業の常識と言えるほど浸透し、素早く顧客からのフィードバックを受けて製品を改善する手法がよく知られるようになりました。しかし、医療業界においては、この手法が当てはまらないどころか、危険をもたらす可能性も示唆されています。リーン・スタートアップ、あるいはアジャイル開発を医療業界で適用するには、どのようにすればよいのでしょうか。

 

MVPは品質が低い試作品ではなく、機能が限定された完成品

リーン・スタートアップの肝はMVP(Minimally Viable Product)と呼ばれるプロトタイプを作成する点にあります。MVPは必要最小限の機能に絞って開発されているため、短い期間と少ない予算で作成できるだけでなく、その新製品の本質的な部分に焦点を絞って、顧客と会話できるのがメリットです。MVPは実際に顧客が試し、使ってみたくなり、さらに、お金を払ってでも手に入れたいと思えるものが良いと言われます。

 

MVPは必要最小限の機能であるものの、品質に妥協があってはなりません。繰り返される開発期間ごとに、必ずテストを実施し、完成した製品を顧客に提示する方法が推奨されています。例えば、新しい電気自動車を開発している会社が、MVPとして電動車椅子を開発したとしましょう。スピードや大きさに妥協はありますが、車椅子として完成した状態で顧客にテストしてもらう必要があるのです。

 

医療業界でリーン・スタートアップを適用する場合でも、同様の考えが求められます。医療業界では、患者の生体情報を取得する機器やアプリを開発したり、医師の診断に役立つような解析ソフトウェアが導入されたりするケースが増えてきました。このような新製品を開発する場合も、初めは機能を絞った製品、かつ、バグのない完成された製品をMVPとして提供しなければなりません。

 

医療ベンチャーでは規制の低いところから参入するのが吉

医療業界の特徴として、製品出荷前に、厚生労働省や米国FDAなどの法令順守の義務がある点が考えられます。人体や医師の判断に影響を与える製品は、いずれも申請作業が必要になるからです。ベンチャー企業においては、少ない人員と短い期間で開発を行っているため、申請作業に手が回らないケースがあるかもしれません。その場合、戦略的に申請作業を避けるようにMVPの製品開発を行うほうが望ましいでしょう。

 

新薬開発は、複数のステージを経て実施されます。基礎研究、動物などに試用する非臨床試験、安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)などがあります。その中でも、医療行為を含まない基礎研究は比較的、規制が緩いため、医療系の新規事業を立ち上げる場合は、基礎研究段階で実績を作ってから、臨床段階へと製品を改善していく戦略が望ましいと言えるでしょう。実際、政府当局が承認審査を行う際にも、MVPによる実績があるほうが、審査が進みやすいとも言われます。

 

参考:When Lean startups can be dangerous

 

まとめ

リーン・スタートアップは市場と製品の適切なマッチングを促進する手法です。必要最小限の機能に絞って開発するMVPの定義を間違うと、医療業界では特に、ユーザーに危険な目を合わせてしまう可能性があります。機能は絞っても品質は妥協しない、そして、リスクの低い使用法から始める戦略をとって、確実にアイデアの検証を進める態度が求められるのです。

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