不妊治療のスタートアップが世界中で創業。先進的な3つのビジネスモデルに可能性

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ビジネスモデル解説

女性が大きなストレスを感じる不妊治療に取り組む「フェムテック」ベンチャー

不妊治療は先進国で共通する話題となっています。米国では出産に向けて1年以上取り組みながらも12~15%のカップルが妊娠に至っていないという調査があります。さらに、その内、女性側の要因、男性側の要因、どちらに原因があるか不明な場合が3分の1ずつに分かれる結果となりました。(NIHより)日本でも6組に1組が不妊に悩み、国内医療機関で多くの体外受精が行われています。

 

少子化・晩婚化の割合は増加してきました。米国の統計では2016年に30歳代の出産が20歳代を上回っています。出産年齢の上昇に伴い、不妊に関する悩みも増えていると言われています。

 

世界的な問題は、大きなビジネスにもつながっています。不妊治療はもちろん、まだ、不妊に直面していない若い世代に対しても、卵子凍結保存のような手段があります。世界的な不妊治療サービス市場は年率9%で成長し、2020年までに210億ドルに至ると予測されました。フェミニン(女性)とテクノロジー(技術)を合わせた「フェムテック」として成長が見込まれる市場です。

 

新しいビジネスに期待が集まるのは、現在の手法に不満が高まっているからです。不妊治療を受けた半数の女性は、人生で最もストレスのたまる時間だったと語っています。治療の成功率が低い点と、費用がかさむ点が大きな理由です。日本の場合、人工授精・体外受精・顕微授精といった手法は公的保険の適用外であり、1回30万~100万の費用がかかってしまいます。

 

体調に関する膨大なデータを収集し、不妊治療に新たな知見をもたらすビッグデータ型ビジネスモデル

フェムテック領域のベンチャー企業は、最新のビジネスモデルを取り入れて、次々と創業されています。同市場の先駆けとなったのが2012年にサンフランシスコで設立されたGlowです。Paypalの共同創業者だったMax Levchinが創業し、ビッグデータを使ったヘルスケア・サービスの提供を行っています。具体的には、スマートフォンアプリに生理周期・体温・気分・食事・運動量などを記録し、妊娠しやすい日を特定したり、体質改善のアドバイスを送ったりする機能です。さらに、妊婦同士で情報交換するサービスや、企業の福利厚生として展開するサービスも展開するようになりました。2018年までに50万人の女性が同社の支援プログラムを利用しています。

 

Glow社が収集したデータは、最新のデータ分析技術によって、年々、精度を向上させています。匿名化された情報は研究機関に提供され、不妊に関する研究に活かされているのです。

 

Glowのビジネスモデルは、ビッグデータを活用する他の健康支援スタートアップに共通するものです。例えば、DNA解析の23andmeは、唾液から簡易な健康診断支援サービスを行うB2C事業と、収集した遺伝子情報を使って製薬企業と新薬開発を行うB2B事業を持っています。Glowも不妊に関する情報で、同じ仕組みを構築しています。

 

個人に最適な不妊治療の方法を必要に応じて利用し、費用を最適化するサブスクリプション型ビジネスモデル

Webサービスでは月額課金を始めとしたサブスクリプション型のサービスが増えています。初めに高額な買い切りをするよりも、必要に応じて最適な商品を利用できるので、利用者にとっては費用の最適化が行えます。また、運営者にとっても、売り上げが安定して得られるのがメリットです。

 

Future Familyは不妊治療にサブスクリプション型のサービスを導入しました。不妊治療は高額で、いつまでかかるか分からないという特徴があります。また、初めに遺伝子検査を希望したものの、後から体外受精を決心するという可能性があるため、治療方針に柔軟性が必要です。同社のサービスは、月額300ドルを5年間購入するプラン等があり、体外受精から医師の診察、ダイエットや体調管理まで全てが含まれたサービスが提供されています。利用者は、必要なときに必要な分だけ利用可能です。

 

モバイル機器で簡単に生体情報を収集し、健康支援を行うモバイルアプリ型ビジネスモデル

数多くの女性向けサービスがあるのに対し、男性向けのサービスも登場しているのも見逃せません。デンマーク生まれのExseedは、スマートフォンに接続する顕微鏡によって、自宅でも簡単に精子の活動を計測できるアプリを開発しました。精子の状態を確認し、健康状態を改善するプログラムを提供します。

 

欧米では、ライフスタイルの変化により過去40年で、精子の質が50%低下し、850万人が不妊の状態にあるという調査があります。不妊問題に消極的で、手間のかかる手法に難色を示す男性にとっても、Exseedの簡易なソリューションは有効です。また、前述のGlow等と同様、収集したデータは、最新の分析技術によって解析され、さらに有効な治療法の開発に活用される見込みです。

 

まとめ

不妊は、多くのカップルが悩みを抱き、その治療プロセスや要する費用に大きな不満があります。ビッグデータやモバイル機器といった最新技術を使って、安全・安価で簡易なソリューションに期待がかかります。多額の投資が行われ、一大産業となりつつあるこの分野で、社会的インパクトと共に、経済的な成功が達成されることを望みます。

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